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自治体のワンストップサービスとは? キーワードは「書かない窓口」

2023.11.14
  • 公共BPO

地方自治体のワンストップサービスは、ひとつの窓口で手続きが完結する取り組みです。住民の利便性が増すため、満足度の向上も期待できます。
事例も交えながら、地方自治体におけるワンストップサービスについて解説します。


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ワンストップサービスとは1ヶ所・1回ですべてが完結すること

地方自治体におけるワンストップサービスとは、これまで複数の窓口に分かれていた行政手続きを1ヶ所の窓口で、もしくは1回の手続きで完了させるサービスです。
これまでの地方自治体では、引越しをした住民は転入届、マイナンバーカードの住所変更、転校手続きなど複数の窓口で手続きを行う手間がありました。その都度待ち時間が発生すれば、住民の負担も大きくなります。
ワンストップサービスは、住民目線で窓口業務を改善する取り組みです。

政府が進めるワンストップサービス

ワンストップサービスには、地方自治体ではなく政府が主体となって推進しているものもあります。主に、デジタルツールを活用することでワンストップを実現したサービスです。
政府が進めるワンストップサービスを、4点解説します。

子育てワンストップサービス

子育てワンストップサービスは、マイナポータル上の「ぴったりサービス」から利用できる子育て支援のサービスです。居住地域を選択し家庭の状況を入力すれば、自身に関係する子育ての制度や必要書類を確認できます。

さらに、マイナンバーカードを保有している住民であれば、児童手当の受給や保育園の申込もオンラインから申請可能です。
多忙な子育て世帯向けに、予防接種や乳児健診のお知らせを電子で受け取れるプッシュ型お知らせ機能も提供されています。

引越しワンストップサービス(引越し手続オンラインサービス)

引越し手続オンラインサービスは、引越し時の手続きをワンストップ化するサービスです。
現在すべての地方自治体で、マイナポータルから転出届を提出できます。転入手続きは窓口でしか行えないものの、マイナポータルを通じて来庁予約が可能です。

さらに、電気やガスなどの民間手続きもまとめて行えるよう、民間事業者の引越しポータルサイトとの連携が進められています。行政だけでなく民間も含め、引越し時の手続きがワンストップ化される予定です。

介護ワンストップサービス

従来、介護に必要な手続きは、窓口に出向いて行う必要がありました。
2019年からマイナポータル上の「ぴったりサービス」で、本人や家族、代理人が介護に関する手続きをオンライン申請できるサービスが始まっています。この介護ワンストップサービスでは、要介護・要支援の申請や住宅改修費の支給申請など11種類の手続きが申請可能です。

介護内容に即したサービスも検索できるため、介護に不安を感じる介護者の精神的な負担も軽減されます。

死亡・相続ワンストップサービス

人が亡くなった場合、遺族は精神的な辛さを抱えた状態で、死亡届の提出や遺産の分割協議、相続の手続きなどを行わなければなりません。
遺族の負担を減らすため、死亡・相続においても、引越しサービス同様に民間手続き含めワンストップ化できるよう連携が推進されています。具体的にはオンラインで認証された遺族が、デジタル化された故人の生前情報を活用できるようになる予定です。

高齢化が進む現在、特に必要とされるワンストップサービスといえます。

自治体でワンストップ窓口導入が進まない理由

全国の地方自治体でのワンストップ窓口導入率は14.5%で、充分に導入が進んでいるとは言い難い状況です。(令和3年4月1日時点)

出典:総務省「窓口業務の民間委託、総合窓口化、庶務業務の集約化等の実施状況について」

住民サービスの向上に有用なワンストップ窓口の導入が、なかなか進まない理由を解説します。

アナログ文化が抜けない

多くの民間企業が、資料のデータ化やペーパーレス化などDX化を進めています。

一方、地方自治体では現在も紙ベースの業務が珍しくありません。

ワンストップ窓口とデジタル化は密接な関係があり、アナログ文化のままではワンストップの導入も困難です。

組織や体制の変更に後ろ向き

ワンストップ窓口を導入する場合、組織改編や体制変更も必要です。
各部署の業務を洗い出し、担当業務を割り振りし直す、さらにフローも整理するとなると、かなりの労力が必要でしょう。
そのため、導入に対して後ろ向きな職員もいます。

職員の育成が間に合わない

ワンストップ窓口では住民の要望に対し、総合的な対応が求められます。
職員はこれまで複数の課で対応していた業務をすべて行わなければならない場合もあるため、育成には時間を要します。
マニュアルの整備も含め、対応できる職員の育成がワンストップ導入の課題です。

コロナ対策に手を取られた

政府が主体となり行政のデジタル化を進める過程で、新型コロナウイルスの感染が拡大しました。
地方自治体はコロナ対策に手を取られてしまい、ワンストップ窓口の導入にまで手を回せなくなったことも導入が遅れた理由の1つです。

キーワードは「書かない窓口」

地方自治体の窓口業務改革のキーワードに「書かない窓口」が挙げられます。
住民サービスが向上するだけでなく、業務を効率化できるため地方自治体職員にもメリットがある取り組みです。
「書かない窓口」のポイントを確認していきましょう。

「書かない窓口」とは

「書かない窓口」とは、住民が各種情報を申請書に記入しなくても行政手続きを進められるサービスです。これまで申請書に記入していた情報は、職員が窓口でヒアリングしながら直接システムに入力します。
住民にとっては書類を書く手間が省け、職員にとっても必要な情報を随時確認しながら手続きを進められるので、双方にとって効率的です。
地方自治体によって異なりますが、住民異動届や住民票、印鑑登録などさまざまな手続きが「書かない窓口」の対象になります。

「書かない窓口」を可能にするBPRとDX

「書かない窓口」の実現にはBPR(業務改革)とDX(デジタルの活用)が欠かせません。
単にツールを導入するだけではなく、導入の前段階として、どういう窓口を目指すのか本来の目的に沿ってBPRを進めましょう。
合わせて、窓口業務のDX化も必要です。手続き手順を住民や職員に案内してくれるナビゲーション機能や、データを活用して申請に必要な情報を入力できる申請書作成機能などがあれば、「書かない窓口」の運用がより容易にできます。

書かない・待たない・回らない窓口を目指して

デジタル庁では地方自治体のDX化を推進し、「書かない」にとどまらず「書かない・待たない・回らない」、住民にやさしい窓口の実現を目指しています。
さまざまな行政手続きをオンライン申請可能にすることで、そもそも窓口に出向かなくても手続きができるようになり、住民の利便性は向上します。
さらに、デジタル化が進めば窓口での業務が減り、地方自治体職員の負担も軽減されるため、職員にとってもやさしい窓口といえるでしょう。

自治体のワンストップサービス導入例

実際にワンストップサービスを導入した地方自治体では、どのような取り組みを実施したのでしょうか。
住民の満足度や職員の業務効率化が実現した成功事例を6つ紹介します。
ワンストップサービス導入を検討する際の参考になさってください。

北海道北見市

北海道北見市では、窓口手続きの効率化を目指す職員からの提案で、書かないワンストップ窓口を実現しています。新人職員が実際に窓口で手続きしてみる実験を通し、住民目線で課題解決に取り組んできました。
住民は窓口で申請書を書く必要がなく、システムから印刷された書類に確認の署名をするだけです。関連手続きもリスト化されるため、窓口を回らずワンストップ受付が可能です。
受付の集約により業務時間も削減でき、職員からも「やって良かった」という声が挙がっています。

出典:総務省「北見市役所の 窓口サービス改善/ ICT活用とBPRの取り組みから」

千葉県船橋市

千葉県船橋市のワンストップ窓口も、北見市同様に住民が申請書を書かない窓口です。必要な情報は、職員が住民にヒアリングをして申請書を完成させます。
船橋市では民間事業者と連携し、ナビ付申請書を中心としたフローを構築しました。ナビゲーション機能で関連する手続きを特定することで、地方自治体側の案内漏れ、および住民側の手続き漏れを防止しています。
今後はテレビ会議システムを活用し、出張窓口での取扱業務も拡大できるよう検討中です。

出典:総務省「船橋市 窓口業務プロセス改革事業」

兵庫県宝塚市

兵庫県宝塚市ではお悔やみ窓口を設け、ご遺族が行う手続きをワンストップ化しました。お悔やみ窓口では、必要な手続きと担当課の案内に加え、申請書の一括作成にも対応します。
住民が亡くなった際には、保険や税金関連、相続関連など多岐にわたる手続きでご遺族の負担も大きいものですが、利用者の92%から満足を得られています。
また、お悔やみ窓口の導入に際してはデジタルツールが取り入れられており、職員の負担が増えていない点も成功事例といえるでしょう。

出典:宝塚市「おくやみ手続きについて」

兵庫県姫路市

兵庫県姫路市では、児童手当に関する手続きや保育所への入所相談など、子育て関連の手続きをワンストップで行えるこども未来局を設置しています。
もともと姫路市では子育て関連の窓口が、市役所の2階と9階に分かれていました。現在は、窓口を1ヶ所に集約することで住民の負担を減らしています。
また、スマートフォンから窓口の混雑状況を確認できたり、インターネットから事前の来庁予約ができたりと、待ち時間にも十分配慮されています。

出典:姫路市「子ども子育て窓口のワンストップ化」

福岡県北九州市

福岡県北九州市では、区役所窓口ワンストップサービスで住民サービスの向上と職員の業務効率化に取り組んでいます。
たとえば従来なら、75歳以上の高齢者が引越した場合、異動届や年金などの手続きで、3つの窓口を回る必要がありました。現在はワンストップサービスの導入により、市民課の窓口のみでそれら複数の手続きが可能です。
さらに、職員が幅広い手続きをスムーズに進められるよう、職員をサポートするための総合受付システムも導入されています。

出典:総務省「住民視点の窓口サービスの実現」

福岡県粕屋町

福岡県粕屋町では町役場に総合窓口を設け、インテリジェント型総合窓口サービスを提供しています。
住民は総合窓口で受付をすれば、複数のサービスをワンストップで受けることが可能です。そのため住民にとっては、手続き漏れによる二度手間や、どの課へ相談すればよいかが分からないという不安がなくなります。
総合窓口の導入により削減できたコストをフロアの改修に再投資し、住民に対して変化を「見せる化」している点も粕屋町の取り組みポイントです。

出典:総務省「住民視点の窓口サービスの実現」

まとめ

窓口業務のワンストップサービス化は、住民の満足度を向上させるのみでなく、地方自治体で働く職員の業務負担も軽減できます。
とはいえ、導入にあたっては組織改編や職員の育成など不安な点もあるでしょう。

日本トータルテレマーケティング株式会社の公共BPOサービスでは、様々な経験や知見をもとに、地方自治体職員さまの働き方改善を支援いたします。
地方自治体さまへのワンストップサービス導入を含め、業務効率化についてのお悩みがあればぜひご相談ください。


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