海外のスマートシティ事例12選!地域別の特徴も紹介

近年、世界各地でスマートシティの開発が進んでいます。地域によって重点分野は異なり、環境保全やインフラ整備、デジタル技術の活用など、多様な取り組みがあります。
地方自治体のなかには、海外の取り組みを参考に「地域の課題解決や豊かな生活環境の整備に役立てたい」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
今回は、海外におけるスマートシティの特徴と先進的な事例について紹介します。
目次
地域別!海外のスマートシティにおける特徴

スマートシティの定義や重点分野は、国や地域によって異なります。欧州・北米・東アジア・その他アジア圏の4つの地域ごとに、それぞれの特徴を紹介します。
欧州
欧州では、スマートシティへの取り組みが進められています。ICTをはじめとするデジタル技術の活用を中心として、主にエネルギー管理や環境保全の分野に重点が置かれています。
また、EU加盟国の多くの都市は成熟しており、人口や経済の安定がみられます。このため、スマートシティでは「都市課題の解決」よりも「効率化」に焦点が当てられている点が特徴といえます。
重点的に取り組まれている施策としては、エネルギー利用の最適化や排出量の削減、行政サービスの双方向性の向上や迅速な対応を目指す取り組みなど、持続可能性を確保するための都市開発があげられます。
出典:国土交通省 「インフラシステム海外展開に向けた海外のスマートシティ動向に関する調査研究」
北米
北米では、先進技術による都市の効率化や安全性、持続可能性の向上に注力していることが特徴です。アメリカでは、米国運輸省がスマートシティの取り組みにおいて、「高度なテクノロジーにより安全性、モビリティ、持続可能性、経済的活力、気候変動への対応を実現する」とのビジョンを掲げています。
アメリカの業界団体「The Smart Cities Council」では、ICTの活用により居住性、作業性、持続可能性の向上を目指すと定義されています。
出典:国土交通省 「インフラシステム海外展開に向けた海外のスマートシティ動向に関する調査研究」
東アジア
東アジアでは、先進ICTを用いた政府主導によるプロジェクトが多くみられます。
都市の経済・社会発展に関わる多分野において、クラウドコンピューティングやIoT、ビッグデータ活用などの導入が進められていることが特徴です。
中国政府に承認された非営利団体である中国電子標準研究所は、新世代のICTを都市の経済・社会発展の各分野に適用することで、都市居住の質やライフスタイルを最適化し、住民の幸福度を高めることをスマートシティと定義しています。
韓国では、「建設技術やICT等の融合・複合化により構築された都市インフラを基盤として、さまざまな都市サービスが提供されることにより、競争力と居住性が高められた持続可能な都市」と定義されています。
出典:国土交通省 「インフラシステム海外展開に向けた海外のスマートシティ動向に関する調査研究」
その他アジア圏
東南アジアやインドでは、各国の課題やニーズに応じたスマートシティ開発が進められています。
シンガポールでは『スマートネイション』構想を掲げ、デジタル技術を活用した都市開発に取り組んでいます。
インドでは、政府のスマートシティ計画のもと、適切な生活の質と持続可能な環境を実現するための都市づくりが推進されています。
出典:国土交通省 「インフラシステム海外展開に向けた海外のスマートシティ動向に関する調査研究」
海外のスマートシティ事例12選

ここからは、海外におけるスマートシティの取り組み事例を紹介します。各地域の社会課題と目標を踏まえて、導入されている技術や取り組みをチェックしましょう。
①アメリカ・ニューヨーク
ニューヨークでは、デジタル技術を活用した市民サービスの向上に取り組んでいます。
ニューヨーク市が保有するさまざまな情報や資料を一般公開したWebサイト「NYC Open Data」を開設して、市民や企業が自由に行政データへアクセスして、利活用できる環境を整備しました。
また、老朽化した公衆電話をWi-Fiホットスポットに置き換える「LinkNYC」プロジェクトを展開して、インターネット環境の整備を進めています。
LinkNYCでは24時間無料でインターネットアクセスや無料通話が可能な端末を設置する計画です。
情報端末にセンサーを搭載して人と車の流れをリアルタイムで把握し、移動支援アプリと連携する計画です。
出典:国土交通省『道路と民間投資等との連携』/総務省『平成26年版 情報通信白書 第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト』
②アメリカ・シカゴ
シカゴ市では、IoTを活用した「Array of Things (AoT)」プロジェクトを展開し、都市データの収集・分析に取り組んでいます。
街中に設置されたセンサーから温度や大気の質などの情報を取得し、交通渋滞や空気汚染、騒音などの都市課題の解決に活用しています。
データの公開により、都市課題の解決や新たな発見につながることが期待されています。
出典:内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「第4次産業革命期における街づくり戦略」
③アメリカ・コロンバス
コロンバス市では、将来予想される人口増加や物流コストの増大などによる交通・運輸の課題に対応するために、モビリティ分野のスマート化を進めるプロジェクト「スマートコロンバス(Smart Columbus)」を2017年に開始しました。
このプロジェクトでは、移動サービスが行き届いていない住民へのアクセス確保と、都市内への商品運搬などを実現するために、自動運転車による移動支援を提供する実証実験が実施されています。
出典:国土交通省「国土交通省2023 第2節 デジタル実装の現在地と今後への期待」/「Smart Columbus」
④オランダ・アムステルダム
アムステルダム市は、2009年に「アムステルダム・スマートシティ・プログラム(ASC)」を立ち上げました。生活・仕事・交通・公共施設・オープンデータといった5つのテーマにおいて、持続可能な都市づくりを推進しています。
スマートグリッドなどの技術を活用し、生活や交通、公共施設の効率化を図るプロジェクトが実施されています。
具体的には、エネルギー使用量を可視化するスマートメーターの導入や、IoTを活用した交通管理システムの導入などが進められています。
出典:「AmsterdamSmartCity」/内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「各国における取組事例」
⑤フィンランド・ヘルシンキ
ヘルシンキ市は、デジタル技術を活用した持続可能な都市づくりに取り組んでいます。
2016年には、ベンチャー企業が開発したアプリ「MaaS(Mobility as a Service)」を世界で初めて実用化し、公共交通やタクシー、カーシェア、レンタルバイクなどの移動手段を統合したモビリティサービスを提供しました。
MaaSアプリ「Whim」により、公共交通やカーシェアなど複数の交通手段を効率的かつ自由に利用できるシームレスな移動が可能となっています。
※MaaS(Mobility as a Service):複数の交通手段(電車、バス、タクシーなど)をシームレスに接続し、1つのサービスとして利用できるシステム
出典:内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「各国における取組事例」
⑥スペイン・バルセロナ
バルセロナ市では、渋滞や大気汚染などの都市課題に対応するため、IoT基盤「Sentilo(センティーロ)」の構築を開始しました。市内のセンサーから騒音や大気汚染、駐車状況、水道・エネルギー使用量、交通量などをリアルタイムで収集・一元管理しています。
このデータをもとに、街灯の点灯時間調整や交通渋滞の緩和など、都市サービスの効率化に活用しています。
出典:国土交通省「インフラシステム海外展開に向けた海外のスマートシティ動向に関する調査研究」
⑦シンガポール
シンガポールでは、ICTを活用してスマート国家を目指す国家プロジェクト「Smart Nation(スマートネイション)」が開始されています。政府が主導してICTの導入とスマートテクノロジーの活用が進められています。
優先的なテーマとされているのが、「国家センサーネットワーク(SNSP)」「デジタル決裁の普及」「国家デジタル身分証(NDI)システム構築」です。政府データのオープン化も進められており、利便性の高い行政サービスの提供が目指されています。
出典:Smart Nation Singapore/内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「各国における取組事例」
⑧中国・浙江省杭州市
中国・浙江省杭州市では、2016年からアリババクラウドと杭州市が連携して「ET City Brain」プロジェクトを立ち上げ、スマートシティ化を推進しています。
AIとビッグデータの活用により、都市の交通問題の解決に取り組んでいます。 道路に設置したライブカメラの映像をリアルタイムで分析して、AIが交通状況に応じて信号機を自動で切り替えることで、渋滞の緩和に貢献しています。
また、異常な車両を検知した際に警察に自動通報する仕組みを構築し、安全性の向上につなげています。 交通状況の最適化を目的とした取り組みの結果、一部の地域において自動車の走行速度が15%上昇、通過時間が15%短縮されています。
出典:内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「各国における取組事例」/内閣府地⽅創⽣推進事務局「「スーパーシティ」構想について」
⑨イギリス・マンチェスター
イギリスのマンチェスター市では、2015年から2017年にかけてICTとビッグデータを活用したスマートシティのプロジェクト「CityVerve」が実施されました。
エネルギー・環境・医療と健康・廃棄物・通信・交通などのテーマにおいて、デジタル化やビッグデータの活用が進められています。
出典:総務省「ICTを活用したスマートシティの事例等に関する調査の請負」
⑩デンマーク・コペンハーゲン
コペンハーゲン市では、2012年からインフラのデジタル化による都市全体の効率化を図る取り組み「Copenhagen Connecting(コペンハーゲンコネクティング)」が開始されています。
プロジェクトの1つである「CITS(コペンハーゲン・インテリジェント交通ソリューション)」では、市内に設置されたセンサーやWi-Fi端末などを通じて収集したデータを活用し、交通渋滞の改善やCO2排出量の削減、市民の安全性向上を目指した取り組みが進められています。ほかにも、エネルギーや環境、交通などの分野においてデータの利活用を通じたスマート化の取り組みが推進されています。
なお、コペンハーゲンの取り組みは世界的に高く評価されており、2014年にはWorld Smart Cities Awardsを受賞しています。
出典:総務省「ICTを活用したスマートシティの事例等に関する調査の請負」/国土交通省 「インフラシステム海外展開に向けた海外のスマートシティ動向に関する調査研究」
⑪エストニア
エストニアでは、「Data Once Policy(一度データを貰ったら二度と同じデータは提出させない)」といった目標を掲げており、ほぼすべての行政分野で手続きの電子化を実現しています。住民は電子身分証明書を利用してポータルサイトから行政手続きができるほか、「X-Road」と呼ばれるデータ共有基盤によって官民のシステムをシームレスに連携しています。
また、オンラインで法人登記ができる「e-Business Register」や、オンラインで料金支払いや空き状況検索ができる「m-Parking」などの利便性の高いサービスも整備されており、住民や企業活動の効率化に寄与しています。
出典:エストニア電子政府/内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「各国における取組事例」
⑫アラブ首長国連邦・ドバイ
ドバイでは、世界一のスマートシティを目指して、都市全体のICTインフラの整備を推進しています。環境問題への対応やより利便性の高いモビリティの実現に向けて、スマートシティに関する政府主導のプロジェクトが実施されています。
主要なプロジェクトとなる「Smart Dubai(スマートドバイ)」では、オープンデータのプラットフォームの整備や電子政府の導入などの取り組みがあり、デジタル技術によるイノベーションに積極的に取り組んでいます。
出典:国土交通省 「インフラシステム海外展開に向けた海外のスマートシティ動向に関する調査研究」/内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「第5回「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会 海外調査結果」
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