一般競争入札とは?入札の種類や進め方をわかりやすく解説

官公庁においては、一般競争入札を耳にする機会も多いでしょう。では、一般競争入札について十分に理解できていますか。
ここでは、一般競争入札の意味やそのメリットとデメリットに触れ、官公庁が採用するほかの入札方式との違いを比較しながら解説します。
目次
一般競争入札とは

一般競争入札とは、官公庁が不特定多数の事業者から契約する事業者を選び、契約を結ぶまでの方式の1つです。入札をした事業者のうち、官公庁にとってもっとも有利な条件を提示した事業者が発注機関と契約を結べます。
このように、一般競争入札は官公庁が民間団体に業務を発注する際の仕組みとして機能しており、官公庁がする入札としてはもっとも一般的なものです。
入札に関する基本的な知識については、以下の記事をご参照ください。
>>関連記事:自治体での入札とは?基本情報とその流れを詳しく解説
一般競争入札のメリット
一般競争入札のメリットとしては、公平性や透明性が高いことです。入札参加資格があれば企業の規模や設立年数に関係なく参加が可能であるため、入札の経験が少ない企業にとっても実績作りのチャンスがあるといえます。
また、事業者を選ぶ過程がわかりやすく、適正な審査を受けることが可能です。
一般競争入札のデメリット
一方で一般競争入札にはデメリットも存在します。前述のメリットから、一般競争入札に参加する事業者が多いため、価格競争の激化が挙げられます。入札の性質も相まって、事業者が大きな利益を確保することは難しいでしょう。
また、一般競争入札をする上での審査手続きが膨大になり、負担が増えてしまうこともデメリットとして挙げられます。
指名競争入札との違い

指名競争入札とは、官公庁が特定の事業者を指名し、その事業者だけが入札に参加できる方式です。
一般競争入札との違いは、一般競争入札においては、参加資格を満たせば誰でも入札できるのに対し、指名競争入札は官公庁からの指名がなければ参加できない点です。
官公庁では一般競争入札を原則としますが、以下のような場合には指名競争入札をすることもあります。
・競争する企業が少ない
・内容が一般競争入札に適さない
・小規模な案件である
指名競争入札のメリット
指名競争入札のメリットとして、契約をする事業者の信頼性をある程度確保できることが挙げられます。官公庁が事業者を指定し、入札に参加する事業者の幅を狭めることで、技術力や実績を担保できます。
また、指名競争入札で指名した事業者とは長期の関係を築ける可能性があることもメリットです。事業者の技術力を確認することで、他の入札においても指名しやすくなるためです。
指名競争入札のデメリット
指名競争入札にはいくつかのデメリットが存在します。まず、官公庁が指名した事業しか入札に参加できない性質上、事業者の指名理由が不明確で透明性に欠けると非難される恐れがあります。
特に、実績のない新規参入事業者にとっては非常にハードルが高いといえるでしょう。さらに、入札に参加する事業者が少なすぎると、指名した事業者間での談合の恐れがあり、公正な入札ができない可能性もあります。
企画競争入札との違い

企画競争入札とは、提案内容や事業者の信頼性を検討して契約事業者を決める仕組みです。この入札方式では、提案の質や技術力、経験などが評価されます。
一般競争入札の多くが最低落札価格方式をとる一方で、企画競争入札では価格以外の面へ注目が可能です。専門性の高い事業をする際にこの方式を採用することが多くあります。
企画競争入札のメリット
企画競争入札では、企画内容に一定の品質を期待できる点がメリットです。この入札方式が、価格だけではなく、主に事業者の提案内容に着目するためです。
また、事業者との間で契約を締結した後でも契約内容を変更できることも大きなメリットです。このように事業者との間での柔軟な対応が可能であることは、官公庁側はもちろん、事業者側にとってもメリットであるといえるでしょう。
企画競争入札のデメリット
企画競争入札のデメリットとしては、公告から入札までに時間がかかることが挙げられます。この方式では、参加資格条件の決定や提案書の評価、事業者側は提案書や見積もりの作成など、多くの作業があります。これらの作業をすべて実施しなければならないため、必然的に多くの時間がかかり、事業開始が遅れてしまうことも考えられるでしょう。
また、一般競争入札ほどの公平性・透明性の担保が困難であることもデメリットです。実績の観点からの評価もあるため、評価基準を明確にしたとしても、必ずしも絶対的な公平性や透明性を示せるとは限りません。
企画競争入札(プロポーザル方式)については、以下の記事もご参照ください。
>>関連記事:自治体が委託先の選定にプロポーザル方式を選ぶメリットとは?提案判定のポイントも
公募型指名競争入札との違い

公募型指名競争入札とは、条件をあらかじめ提示した上で、入札へ参加希望をした事業者のうちから官公庁が入札に参加できる事業者を選ぶ方式です。
これは多数の企業が入札可能な「公募」の仕組みと、技術力に一定の保証が得られる「指名」の仕組みを組み合わせたものです。つまり、一般競争入札と指名競争入札の中間に位置する方式だといえるでしょう。
随意契約との違い

随意契約とは、官公庁が事業者との契約をする際に入札をせず、任意の事業者を直接指名して契約を結ぶ方式です。この方式は、一般競争入札のデメリットである、企業利益の少なさや手続きの多さが解消され、価格だけではなく契約や事業へのスピーディーな開始が期待できます。
その一方で、官公庁と事業者との癒着を引き起こすほか、より高い談合のリスクを抱えるものでもあります。
随意契約については、以下の記事もご参照ください。
一般競争入札の落札方式

上記で解説した一般競争入札には、最低価格落札方式と総合評価落札方式のふたつがあります。
以下ではそれぞれの方式について解説します。具体的なメリットやデメリットを知ることで、一般競争入札に関する理解を深めましょう。
最低価格落札方式
最低価格落札方式とは、あらかじめ設定されている予定価格範囲内の入札のうち、もっとも低い価格で入札した事業者と契約をする方式です。入札価格には下限があり、これを下回ってしまった事業者も採用されることはありません。
この方式では、税金を使った事業においては重要である価格の側面のみで事業者を決定します。しかし、近年では事業の品質低下を懸念して、次で紹介する総合評価落札方式を採用するケースも多くなってきています。
総合評価落札方式
総合評価落札方式とは、最低価格落札方式での評価ポイントである価格だけではなく、技術力や経験、企画書などを総合的に評価して契約する事業者を決める方式です。
このような評価方法によって、価格と技術力のバランスが取れるだけでなく、中小企業にも落札のチャンスを与えることができます。
一般競争入札を行う流れ

これまで解説してきた一般競争入札ですが、このデメリットとして手続きが多いことを挙げました。では、実際にはどのような手続きをするのでしょうか。
以下では入札の準備から落札、そして契約までの流れを解説します。
入札説明書・仕様書を作成する
一般競争入札をする際にはまず、入札説明書と仕様書を作成します。入札説明書とは入札に関する一般的な説明が記されたものです。本書類に関して、一定期間は事業者からの質問を受け付けることが一般的です。
仕様書とは、入札の対象となる納品物の仕様を詳しく記した書類のことです。
仕様書には、次の内容が記載されています。
・作業対象
・作業方法
・納期
この書類は契約する事業者との齟齬を少なくすることを目的として作成されるものです。
入札公告を出して参加申し込みを受け付ける
次に入札公告(告示・公示)を官報や公報、庁舎掲示板やWebサイトなどに掲載し、公開します。これをもって入札参加申し込みの受付を開始します。参加を希望する事業者は、入札参加申込書を提出することで参加表明となります。
なお、入札公告は予算決算及び会計令によってその内容が定義されています。内容は以下の5点です。
・競争入札に付する事項
・競争に参加する者に必要な資格に関する事項
・契約条項を示す場所
・競争執行の場所及び日時
・会計法第29条の4第1項の保証金(以下「入札保証金」という。)に関する事項
(予算決算及び会計令75条)
入札を執行し落札者を決定する
次に、入札者立ち会いのもと、開札して落札者を決定します。この結果に従ってWebサイトやデジタル庁の調達ポータルに落札結果を通知します。
落札結果を通知する際には参加したほかの事業者の金額を閲覧できることが一般的です。
事業者と契約する
最後に、再度業務内容や納期、支払い条件を文書化し、落札した事業者と契約を結びます。契約書を作成する際は十分に内容を確認し、必要であれば交渉をしましょう。
ここで両社が細部まですり合わせをすることが、その後のスムーズな事業開始につながるでしょう。
一般競争入札における談合

談合とは、入札に参加する事業者同士が事前に相談して、落札者や価格を決めることです。言い換えると、入札の仕組みそのものが機能していない状況だといえます。
もし、このように入札のルールが破られた場合の問題点と科せられる罰則に関して、以下で解説します。
談合の問題点
談合がなされた場合、入札事業者は本来の価格よりも高額で落札できます。これは談合により落札価格が決定されることで、事業者間の公正な競争が妨げられた結果です。
また、官公庁側の人間が談合を主導したり、談合にかかわったりする官製談合もあります。どちらの場合でも、必要以上の税金が無駄に使われてしまいます。
談合に対する罰則
談合による税金の無駄遣いは、税金を払っている国民・市民にとって、よいものではありません。公共事業として国民に還元される税金が、一部の人間に流れている状況であるためです。
このような談合の抑止力となるために、談合に対していくつかの罰則が法律で定められています。
これらの罰則について以下の表にまとめました。
法律 | 違反行為の類型 | 罰則 |
---|---|---|
刑法 | 公契約関係競売等妨害 | 3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金またはこれらの両方 |
談合罪 | 3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金またはこれらの両方 | |
収賄罪 | 5年以下の懲役 | |
加重収賄罪 | 1年以上の懲役 | |
独占禁止法 | 不当な取引制限 | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 法人に対して5億円以下の罰金 |
官製談合防止法 | 入札談合関与行為 | 5年以下の懲役または250万円以下の罰金 |
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ここまで、一般競争入札がどのようなものか、そして他の方式と比較しつつメリットやデメリットを解説しました。一般競争入札にはデメリットも存在する一方で、その仕組みは税金を扱う官公庁にはなくてはならない、必要不可欠な契約方式です。
したがって、一般競争入札に関する正しい知識を深め、ケースに応じた適切な方式を採用することは、よりよい事業を実施できるようになるともいえます。この機会に、効率的で適切な入札方法の選択を習得しましょう。
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