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自治体にBPRが不可欠な理由とは|基本的な概念とステップを解説

2024.05.31
  • 公共BPO

自治体のDXを推進する際によく用いられる概念の1つに、BPRがあります。
この記事では、BPRについて自治体に求められる理由やBPRの構成要素、BPRを実現させるステップなど、さまざまな要素について解説します。


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BPRとは

BPR(Business Process Reengineering)は、ビジネスプロセス再設計とも呼ばれ、組織内のビジネスプロセスを根本から見直し、再設計するための方法論のことです。
従来のプロセスを見直して再設計する際に新しい方法やテクノロジーを導入することで、組織全体の機能性の向上を目指します。

BPRは1980年代末から1990年代初頭にかけて、広く用いられました。

自治体にBPRが求められる理由

自治体におけるBPRが求められる理由は、多岐にわたります。
たとえば、効率化や業務内のコスト削減、サービス向上、住民満足度の向上などです。

自治体は公共サービスの提供が中心であり、人口減少や予算制約などの問題に直面しています。また、既存のプロセスの中には時代遅れで非効率なものもあります。

BPRは、新しいテクノロジーやデジタル化を活用し、業務プロセスの最適化を提供する際に必要な要素です。業務効率の向上は、市民に対するサービスの迅速で効率良く提供が可能となり、各種コストの低減も可能です。

BPR・DX・業務改善の関係性

DXはデジタル技術を活用してビジネスプロセスを変革し、効率性とイノベーションを促進します。
業務改善は、プロセスの効率化や品質向上を追求する広範なアプローチで、DXやBPRは業務改善の一部、さらにBPRは効率的なDXを行う際に多くの場合で必要になる要素と位置づけられます。
まとめると、BPRはプロセス再設計の手法であり、DXはデジタル技術を活用する手段で、業務改善はこれらを包括に取り入れる戦略です。組織はこれらの概念を組み合わせ、変化するビジネス環境に適応し、持続した競争力を確保するために活用しています。

自治体でBPRが進まない理由

既に説明したように、BPRは民間では1980年代末から1990年代初頭にかけて、広く用いられた概念です。BPRはなぜ今、自治体で必要とされているのでしょうか。
ここからは、自治体のBPRが進まなかった原因について考察します。

業務が整理・標準化されていない

BPRは、プロセスの再設計を通じて効率性を向上させるために、業務の整理・標準化が求められます。
一方で自治体は、多くの部門や部署で業務が独自に発展し、複雑なプロセスが生じてしまっています。複雑で標準化されていない業務は、プロセスの再設計が困難です。

また自治体では部門間の連携や情報共有が不足しており、業務改革が順調に進まないケースも見られます。

業務的負担が大きい

多くの自治体では、公共サービス提供が業務の大部分です。
それゆえに、BPRの導入やプロセスの再設計に多くのリソースを必要とし、その確保が難しいと考えられます。

また、BPRの実施に伴う変更管理や従業員の教育も求められます。これらの業務負担の大きさも、自治体のBPR実施が遅れている一因でしょう。

BPRを構成する4つの要素

BPRを実施する上で、重要な考え方があります。それは、イルクスの4原則です。
イルクスの4原則とは、排除・結合・再配置・単純化の4つの要素からなるフレームワークです。

排除(Eliminate)

余分なプロセスや手続きを除外し、効率のよいプロセスを構築するBPRの中核を成す要素です。目的が分かっていない活動や手続きを削減することで、プロセス全体の効率を高めます。
また、過度に複雑な手順やプロセスを簡素化し、理解しやすくします。

排除は、プロセス再設計で最も挑戦的なステップの1つであると同時に、効率性の向上に不可欠でもあります。自治体は、徹底した分析と適切な計画を通じて排除を実行し、BPRの成功に向けての努力が求められます。

結合(Combine)

部門ごとの業務内容を再確認し、個々に進行中のタスクを統合できないか考えるプロセスです。結合は自治体内の情報やリソースを共有し、自治体の全体最適を目指します。
異なる部門で業務について情報共有をすることで、担当領域が重複していないかを確認する作業がその一例です。

結合は、BPRの成功において、組織全体の効率性を高めるために欠かせないものです。自治体は、効果のある連携を実現するために、戦略の策定が重要です。

再配置(Rearrange)

業務内の責任や役割を見直し、組織全体の効率性を向上させる重要な概念です。従業員の専門知識とスキルに応じて最適なタスクに割り当てることで、生産性が向上します。
また、業務プロセスを見直し、業務の順序や手順の最適化も大切です。

自治体ほどの規模となると、職員の数が多くなり、一人ひとりを最適な配置に割り当てることは困難だと考えられます。
それゆえに、自治体のBPRにおいては、タスク割り当て以上に、業務プロセスの見直しが成功に大きく影響すると考えられます。

単純化(Simplify)

既存業務の複雑なプロセスや手順を、システムやツールを用いて簡素化することです。理解しやすく、実行しやすいような設計を目標としています。
また、単純化には、適切なタスクを自動化することも含みます。自動化の実現は、ルーチン業務の負担を軽減し、職員は別の業務に集中できるでしょう。

プロセスが複雑で不透明な場合、時間とリソースの浪費やエラーの増加などのトラブルが予想されます。したがって、単純化は自治体の組織体制を高め、持続的な改善を実現するための基盤になると期待できます。

BPRを実行する際の5ステップ

BPRは、具体的にどのような段階を踏みながら進めていけばいいのでしょうか。
ここからは、BPR実行を促す5つのステップを紹介します。

検討

現行プロセスの評価を実施し、BPRの実行が望ましい業務を洗い出します。
その後、新しい設計を実行する上で、どのようなシステムやツールを導入するか決定し、目標を設定します。

分析

既存プロセスを見直し、最適な方法を決定した後、最適化の過程で想定される問題について把握します。
また、 新しいプロセスを導入する過程でトラブルが発生した時の、対処方法についても未然に予想します。

設計

BPRを実行する前に、検討・分析した内容を下に、具体的な計画を作ります。
また、BPR実施後の結果に対して、評価方法や修正・調整するためのフィードバック方法などもこのステップで決めておきます。

実施

BPRを実際に実行するステップです。再設計による新しいシステムやツールの導入が主な目的です。
また、職員に対する新しいシステムやツールの教育もこのステップに含まれます。

評価 

新しいプロセスへの移行後の効果や成果を評価します。目標達成度を分析し、移行による効果を分析します。
また、職員からフィードバックを収集し、改善点の有無についても評価するとより効果の高いBPRとなるでしょう。

BPRのポイント

BPRを実施する中で、職員個人がいつもの業務のプロセスでBPRを意識して取り組むことが不可欠です。BPRの担当者は、それに加えてBPRの実現のために次のポイントを注視することも求められます。
BPR担当者が注目すべき5つのポイントについて解説します。

業務の可視化

業務のプロセスを明確に理解し、改善の機会を特定するために実施されます。
たとえば、ステップや手順、関係者の役割の明確化を目的として、現行のプロセスをフローチャートやダイアグラムを使って視覚化します。
また、プロセスに関連するデータやメトリクスを収集し、プロセスのパフォーマンスを評価することで、改善の方向性を示せます。

他にも、各業務毎の担当者との対話を通じて、業務フローについての意見を獲得します。職員の視点を理解できれば、改善の優先順位の助けとなるでしょう。

アウトソーシング化

自治体が内部の業務プロセスを、外部の専門業者やサービスプロバイダーに委託することを検討するケースもあるでしょう。

自治体ほどの規模となると、自治体内部でBPRを完結させることは困難な場合もあります。アウトソーシングを活用して、職員は主要なコア業務にリソースと時間を集中し、サポート業務を外部に委託することで、スムーズにBPRを実行できると期待できます。

ただし、アウトソーシングする際にはセキュリティとプライバシーの配慮が大切です。自治体は、信頼性と品質を確保するために、適切なプロバイダーの選択を求められます。

シェアードサービス

シェアードサービスとは、異なる部門や拠点で行われている同様の業務を中央の共有サービス部門に統合する方法です。

同じ業務を専門的に取り扱うことによって、業務の一貫性と効率性が向上します。さらにプロセスの標準化と、ベストプラクティスの適用が可能です。
また、重複する業務を統合することで、人件費や設備費用を削減できます。

また、シェアードサービスはリスクを中央に集約するため、リスク管理の強化が容易です。

RPA

RPAは人間の手作業を自動化し、ソフトウェアロボットを使用してルーチン業務や繰り返しのプロセスを自動化する手法です。
従業員の負担を軽減し高い精度でタスクを実行できるため、エラーの削減と業務の迅速な処理が可能です。

自治体は、企業のような経済的な組織ではなく行政機関です。それゆえに、BPR実行にかかる負担を外部へ委託できないケースも考えられます。
RPAであれば、外部に頼らず業務負担を軽減できます。

自治体におけるBPRの事例

自治体におけるBPRの事例として、愛媛県のケースを紹介します。
愛媛県は、全体の業務から特に負担が大きい住民記帳台帳業務に注目しました。この業務は、愛媛県が管理する業務量データのうち、約50%を占めるほど膨大なリソースが割かれている業務でした。愛媛県は、該当業務に対し、BPRを実施することで業務改善が見込めると判断し、BPRを実行しました。

このプロジェクトが成功すれば、愛媛県だけでなく他の市町村も業務改善が期待でき、愛媛県のBPR情報を元に、汎用性のある実践モデルを構築できれば全国規模で展開することも見込めます。

出典:「県と市町の連携業務におけるBPRモデル事業」 (愛媛県)

まとめ

BPRについて自治体に求められる理由やBPRの構成要素、BPRを実現させるステップなど、さまざまな要素について解説しました。

自治体は、人口減少や高齢化などさまざまな問題に直面しています。もしBPRが問題解決の一助になる業務があるとお考えであれば、一度専門家に相談することをおすすめいたします。

弊社日本トータルテレマーケティングは、自治体の方向けにBPRを含めた業務の効率化・BPOサービスを提供しています。システムの導入や窓口業務の人材不足・効率化をご希望の場合はぜひご相談ください。


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