日本国内のスマートシティ事例12選!スマートシティが求められる背景や技術は?

スマートシティは、IoTやAI、ビッグデータなどのデジタル技術の利活用によって、社会・経済・環境の側面において将来の持続性を確保した街を指します。
日本では、都市部への人口集中や労働力の減少、防災の強化、環境問題への対応などといったさまざまな都市問題を抱えています。スマートシティの実現によって、これらの問題を解決することが期待されています。
今回は、日本国内でスマートシティが推進される背景や活用される技術、市区町村の事例について紹介します。
目次
日本のスマートシティが推進される背景

日本国内でスマートシティが推進される背景には、都市問題の顕在化や世界的な環境問題への対応があります。
人口減少や高齢化の進行
日本では少子化による人口減少や高齢化が進行しており、産業社会を支える担い手が今後不足していくことが予想されています。
持続可能な街をつくるには、IoTやAIなどの先端技術を取り入れたスマートシティの推進により、不足する労働力を補完することが求められます。
また、ICTを取り入れた快適かつ利便性の高い暮らしを実現することは、生活の場・働く場としての魅力向上にもつながり、人口の転入、産業の復興を後押しすると考えられます。
公共インフラの老朽化
住民の生活を支える公共インフラの老朽化が各地で深刻化しており、建設後50年を経過する設備が今後増加していくと考えられています。これにより、地方自治体における維持管理コストや自然災害によるリスクの増加が懸念されています。
これらの課題に対応するには、公共インフラをデジタル技術を用いて管理できる環境を整備して、計画的な補修・修繕や地域防災の強化、災害時の迅速な復旧対応などを実現する必要があります。
公共インフラを維持して将来にわたって安全に暮らせる街をつくるためにも、スマートシティの推進が求められます。
地球環境問題への対応
地球環境に関する課題として、エネルギーの無駄遣いや廃棄物の増加が挙げられます。
低炭素社会・資源循環型社会の実現や環境負荷の低減を図るには、ICTの効果的な活用によってエネルギーの有効活用や資源のリサイクルなどを実現することが求められます。
スマートシティに求められる技術

スマートシティの推進には、最新の技術が不可欠です。
具体的にどのような技術が求められるのか、ここでは3つの技術について詳しく説明します。
センシング技術
まず注目したいのはセンシング技術です。これは専用のセンサー(感知器)を使用して、事象や状態を計測し、数値化する技術を指します。都市の運営やサービス提供を、より効率的かつ効果的に実施するために必要な技術です。
たとえば、道路に設置するセンサーは、交通の状態を測定して渋滞の予防に活かされます。また、河川や公共施設に設置することで、防災や暮らしの情報提供にも役立ちます。
通信技術
次に取り上げるのは通信技術です。スマートシティの推進には、行政と民間のシステムを連携させ、リアルタイムでデータを収集して活用することが求められます。
スマートシティにはIoT化が不可欠であり、あらゆるものがインターネットによって接続され、相互通信できる状態でなければ実現できません。通信技術はスマートシティの基盤ともいえるでしょう。
データ分析技術
3つ目は、ビッグデータの分析技術です。ビッグデータとも呼ばれる膨大なデータは、蓄積してさまざまな観点から分析し、何らかの意味や解を見出すことで初めて「使えるデータ」となります。
たとえばビッグデータの分析技術を駆使することにより、犯罪防止や自然災害の予知、医療診断の向上など、社会全体の安全性や利便性を高める施策が可能となります。市民生活の質を向上させる新たな道が開かれると考えられるでしょう。
日本国内のスマートシティ事例12選

日本国内のスマートシティの取り組みについて、12の事例をご紹介します。
北海道札幌市
札幌市ではICT活用戦略の目標の1つとして、イノベーションプロジェクトを推進してきました。官民が保有するデータを多くの人と協調利用し、イノベーション創出の契機となるよう目指しています。
民間事業者・大学・市民がデータを利用できる窓口として、Webサイト「札幌市ICT活用プラットフォーム DATA-SMART CITY SAPPORO」を開設しました。「データの地産地消」を実現し、健幸街づくり推進プロジェクトやインバウンドマーケティングに関する事業などに活かしています。
出典:札幌市デジタル戦略推進局「札幌市ICT活用プラットフォーム DATA-SMART CITY SAPPORO」「札幌市 ICT 活用戦略」「スマートシティ実現に向けた 札幌市の取組と目指す姿」
福島県会津若松市
会津若松市は、「スマートシティ会津若松」を推進しています。これはICTや環境技術を、健康・福祉・教育・防災などの分野に利用し、持続可能な地域社会と快適な街づくりを目指す取り組みです。
地域経済の活性化・安心して快適に生活できる街づくり・「まちの見える化」の3つの視点を重視し、さまざまなサービスの提供を進めてきました。
出典:会津若松市「スマートシティ会津若松」について
群馬県前橋市
前橋市は「MaeMaaS(前橋版MaaS)」の実証実験を行い、公共交通やその他の移動サービスをシームレスに組み合わせた利便性向上を目指しています。マイナンバーカードの活用による認証基盤も導入され、利用者に対する割引施策や、移動と地域サービスとの連携が図られています。
今後もサービスの拡充や改善が検討されています。
出典:前橋市交通政策課「MaeMaaS報告」
東京都港区
東京都港区は、最先端のテクノロジーを街全体で活用するプロジェクトとして「Smart City Takeshiba」を推進しています。竹芝地区において、都市型スマートシティのモデルケースを構築し、3D都市モデル(バーチャル竹芝)を用いたシミュレーションなどを通じて、地域課題の解決を目指しています。
具体的な取り組みとしては、都市OSの運用やMaaSサービスの開発が挙げられます。2021年度から都市OSの運用が開始され、舟運モビリティと陸運モビリティを連携させたMaaSの実証実験も進行中です。また、バーチャル竹芝による避難シミュレーションや、混雑予測を用いた防災対応の強化など、交通や防災といった複数分野において、地域課題に対応する先進的な手法が導入されています。
出典:国土交通省「Smart City Takeshiba 実行計画(東京都港区)」
埼玉県さいたま市
さいたま市が進める「スマートシティさいたまモデル」とは、市民の生活の質向上と社会課題の解決を目的とした取り組みです。デジタル技術を利活用して「人と人とを絆で結ぶスマートシティ」の実現を目指して取り組んできました。
スマートシティのモデルとして「アーバンデザインセンターみその」を拠点にエリアマネジメントをして、地域コミュニティを形成します。また、都市OS(共通プラットフォームさいたま版)を活用して、交通やヘルスケアなどの生活支援サービスを提供しました。さらに「スマートホーム・コミュニティ」先導的モデル街区を整備するなど、住環境の質を高める取り組みも進められています。
出典:さいたま市「スマートシティさいたまモデルの推進」
神奈川県横浜市
横浜市では、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」を推進し、官民連携のもと、環境と経済の好循環を目指した大規模なエネルギーマネジメントを行ってきました。具体的には、HEMSやEV、太陽光発電などを活用した再生可能エネルギーの導入や、地域全体のエネルギー効率化に取り組んでいます。
さらに、「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」では、エネルギーセンターを拠点に、研究施設や商業施設への電力・熱供給を通じて、持続可能で防災性の高い街づくりが進められています。
出典:横浜市「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の取組みと今後の展開について」
静岡県裾野市
裾野市では、トヨタ自動車が進めるウーブン・シティ構想と連携し、自動運転やモビリティ、ロボットなどの最先端技術の実証が行われる「実証実験の街」としての街づくりが進められています。
住民が実際に暮らすリアルな環境の中で、さまざまな分野の技術を検証し、地域課題の解決や新たな価値創出を目指しています。こうした取り組みは、カーボンニュートラルな未来都市の実現にもつながっており、裾野市とウーブン・シティは共に未来を見据えて取り組みを進めています。
出典:広報すその「これからのまちづくり」
長野県伊那市
伊那市は、高齢化が進み生活インフラの確保が困難になった地域を対象に、先端技術を駆使した「スマートローカル」を目指して取り組みを進めてきました。具体的には次のようなサービスがあります。
・ケーブルテレビのリモコン操作で地元スーパーの商品を注文し、ドローンで配達してもらうシステム「ゆうあいマーケット」
・AI自動配車により、利用者の自宅から目的地までドアツードアで送迎する交通サービス「ぐるっとタクシー」
・医療機器を搭載した移動診療車が患者宅を訪れ、医師とオンラインで診療をする「モバイルクリニック」
このようなプロジェクトは、山間地域で暮らし続けられる生活基盤の確立や、暮らしの豊かさ向上に貢献しています。
出典:伊那市「日本を支えるモデル都市の構築を目指して」
大阪府大阪市
大阪市では、住民票の写しの請求など多くの手続きを自宅などから簡単に申請できる「大阪市行政オンラインシステム」を提供しています。市役所に行かずに申請が完了できるこのシステムでは、マイナンバーカードやクレジットカードを利用して、手数料のオンライン決済も可能です。
スマートフォン向け専用アプリ「スマートOSAKA」を使えば、マイナンバーカードを用いた電子署名の付与やマイナンバーの読み取りが行えます。また、「スマート申請(手続き判定ナビ)」では、ライフイベントに関する質問に答えることで、必要な手続きや持ち物を確認できます。また、判定結果で表示された必要な手続きについては、スマートフォンなどから事前に申請内容を入力することで、来庁時に入力内容が反映された申請書を受け取ることも可能です。
出典:大阪市「大阪市行政オンラインシステム」
兵庫県加古川市
加古川市では「誰もが豊かさを享受できる加古川スマートシティ推進事業」を基本理念とし、「幸せを実感できるまち加古川」の実現に向けた取り組みを進めています。狙いは、市民の満足度や生活の質(QOL)を向上させ、地域課題の解決を図ることです。
プロジェクトの1つである「データ利活用型スマートシティ推進事業」では、AIカメラのセンシングデータ(危険運転車両検知)を活用した次世代見守りサービスを展開しており、交通事故防止への貢献が期待されています。
出典:国土交通省「誰もが豊かさを享受できる加古川スマートシティ推進事業」
香川県高松市
高松市では、ICTを使った地域課題の解決を目的として「スマートシティたかまつ」を推進してきました。産学官民が持つ多様なデータを共通プラットフォームに集約し、分野横断的に活用することで、行政の効率化を図っています。
集約されるデータは、複数分野にまたがるさまざまな情報で構成されており、産学官民が連携してスマートシティの実現を目指しています。
出典:高松市「スマートシティたかまつ」
福岡県北九州市
北九州市では、新たな産業の育成と市民生活の向上を目指し「北九州スマートコミュニティ創造事業」を展開しています。地球温暖化防止・循環型低炭素社会の形成・環境街づくりを目的とした地域タウンマネジメントを柱に「地域のエネルギーと需要に応じた役割をデザインしたまちづくり」を進めました。
これにより「最先端の省エネ装置が設置・接続され、技術的なプラットフォームが整備された」「エネルギーの需給バランスを調整する機能を導入した」といった成果があがったと発表。今後も新しい交通システムの構築、生活スタイルの変革など、市民生活の向上や地域課題の解決につながる新しい街づくりを目指すとしています。
出典:北九州市環境局「北九州スマートコミュニティ創造事業」
自治体DX支援は当社にご相談ください

今回は日本のスマートシティの事例12選を紹介しました。スマートシティが注目される背景として、少子高齢化による労働人口の減少や地球環境の保護が挙げられます。今後、センシング技術・通信技術・データ分析技術の発展に伴い、スマートシティの推進は加速すると考えられるでしょう。
地方自治体のDX支援については、日本トータルテレマーケティング株式会社にぜひご相談ください。当社では広範囲にわたる「経験」「技術」「知見」により、自治体様のニーズに応えるサービスを提供し、DX推進をサポートいたします。