アパレル物流とは?その業務内容とよくある課題について解説

アパレル物流は、衣類やファッションアイテムの流通を支える物流の仕組みです。アパレル業界は華やかに思われがちな一方で、アパレル物流は商品の管理や仕分けなど、業務が複雑で多岐にわたります。
今回は、その基本的な業務内容から、アパレル物流の現場でよく見られる課題、そして改善策までくわしく解説します。
目次
アパレル物流とは

アパレル物流とは、衣類やファッション小物などの製品が、メーカーから消費者の手元に届くまでの物流全般を指します。衣類は色・サイズ・型番などのバリエーションが多いため、他業界と比べて在庫管理が非常に複雑です。また、季節ごとの商品入れ替えやトレンドの変化も早く、スピーディーで正確な対応が求められます。
倉庫では同一アイテムでも微妙な違いを判別して仕分ける必要があり、細かな作業が続きます。アパレル物流は単なる運搬にとどまらず、ブランド価値や販売戦略にも直結する重要な業務です。そのため、効率的な運用と精度の高い管理が求められます。
アパレル物流における業務の流れ

アパレル物流では、商品が倉庫に届いた時点から店舗や顧客に届けられるまで、さまざまな工程を経て商品が管理されています。
ここでは、アパレル物流の代表的な業務の流れを紹介します。
入荷からの検品
アパレル物流の最初の工程は、メーカーや生産工場から届いた商品を倉庫に受け入れる「入荷検品」です。納品書と照らし合わせながら、品番・色・サイズごとの数量が正しいかを確認します。
衣類の場合、見た目が似ていても微妙に色や仕様が異なるため、細かな確認作業が必要です。商品の破損や汚れ、不良品が混入していないかのチェックも重要です。
この段階でミスが発生すると、後の在庫管理や出荷作業に大きな影響を与えるため、正確さと丁寧さが求められます。
仕分けと保管
アパレル物流において、入荷・検品後におこなわれることが、仕分けと保管です。衣類やファッションアイテムは、色・サイズ・型番などの違いが多く、同じ商品でも細かく分類する必要があります。誤出荷を防ぐためには、商品ごとに適切なロケーション(保管場所)を割り当て、倉庫内管理システムへの登録が必須です。
保管時にはシワや型崩れを防ぐ配慮が必要な場合もあります。アパレル特有の多品種・小ロットな特性に対応するため、見やすく取り出しやすい収納設計が求められるでしょう。
ピッキング
ピッキングは、アパレル物流でも特に精度とスピードが要求される工程です。店舗やオンラインショップの注文に応じて、倉庫内から対象の商品を取り出す作業です。衣類の場合、同じデザインでもサイズやカラー違いが多いため、類似商品との取り違えが起こりやすく、バーコードによる確認作業が不可欠です。
また、出荷のスケジュールによっては時間に追われることも多く、正確さと効率を両立させる工夫が求められます。近年では、ピッキングのミスを防ぐために、デジタル化や自動化を導入する企業も増加しています。
出荷加工
アパレル物流の出荷前には、商品を販売可能な状態に整える出荷加工がおこなわれます。具体的には、値札やタグの取り付け・ハンガー掛け・袋詰め、複数商品のセット梱包などが該当します。これらの作業は見た目の印象や取り扱いやすさに直結し、ブランドイメージにも影響を与えるため、丁寧な仕上げが必要です。
また、誤梱包を防ぐために品番や数量の最終チェックも欠かせません。小売店への納品か、個人顧客への配送かによっても出荷加工の内容は異なり、それぞれの仕様に応じた柔軟な対応が求められます。
出荷検品と検針
アパレル物流における出荷検品は、商品の品質を最終確認する重要な工程です。入荷時にも検品はおこなわれますが、出荷前には破損や汚れ、タグの有無などを改めてチェックし、店舗や顧客へ不良品が届くことを防ぎます。
また、検針も不可欠の業務です。これは縫製時に使用された針が折れて商品内に残っていないかを確認する工程で、安全性の観点から特に子ども服や肌着などでは重視されます。専用の検針機を使い、万が一異物が検知された場合は再検査します。出荷前の二重チェックによって、アパレル物流の信頼性が保たれているといえるでしょう。
梱包および出荷
出荷前の最終段階が梱包と出荷の工程です。ピッキングされた商品は、配送先の店舗や顧客ごとに分類され、指示書に基づいて適切な資材で箱詰めされます。商品の型崩れを防ぐために緩衝材を使うことや、アパレル特有の畳み方を工夫することもあります。
伝票の貼り付けや納品書の封入作業も含まれ、この工程でのミスは誤配送や返品につながるため、細かな確認が重要です。梱包が完了した商品は、配送業者によって各地へ出荷されます。効率よく正確な出荷作業が、アパレル物流全体の品質向上につながります。
返品対応
アパレル物流では、返品対応も重要な業務の1つです。店舗や顧客から返送された商品は、検品され、汚れ・破損・タグの有無などを確認します。再販売が可能な商品であれば、元の在庫として倉庫内に戻されますが、状態によって廃棄や修繕、アウトレット用への再分類が必要な場合もあります。
返品理由を記録し、傾向の分析によって、商品の品質改善や配送ミスの防止にも役立ちます。返品対応の正確性とスピードは、顧客満足度の維持や在庫管理の最適化にもつながります。アパレル物流における返品処理は、単なる後処理ではなく、業務全体を支える大切な業務です。
アパレル物流におけるトレンド

ファッション業界は、消費者ニーズや社会情勢によって絶えず変化する業界です。アパレル物流も例外ではなく、近年はEC化や自動化、環境対応など、新たな動きが加速しています。
ここからは、アパレル物流における近年のトレンドについて解説します。
ECサイトでの販売に移行
コロナ禍以降、消費者の購買行動は実店舗からECサイトへと大きくシフトしました。これによって、アパレル物流にはこれまで以上のスピードと柔軟性が求められています。店舗配送に比べて、個別の顧客へ直接商品を届けるBtoC型の出荷が増加し、ピッキングや梱包作業の負担も増えています。
返品対応の頻度も高まって物流業務の複雑化が進み、アパレル物流の重要性が高まっており、物流を考慮した販売戦略が欠かせません。ECサイトの発展は今後も続き、物流体制の見直しが求められます。
自動化とサステナビリティへの対応
アパレル物流では、近年自動化と環境配慮の取り組みが進んでいます。作業の効率化を目的に、ロボティクスや追跡システムなどが導入され、ピッキングや仕分けの正確性とスピードが向上しています。加えて、SDGsの浸透によって、環境負荷を減らす物流のあり方も注目されるでしょう。
再利用可能な梱包資材の活用や、配送ルートの最適化によってCO2排出の削減を目指す企業も増加傾向にあります。これらの対応は企業イメージの向上だけでなく、持続可能な成長にもつながるため、アパレル物流の分野において今後さらに加速すると見込まれます。
アパレル物流によくある課題

アパレル物流は多品種小ロットでの対応が多く、他業界に比べて特有の課題が多く見られます。在庫や保管、流通のすべてにおいて高度な管理が必要です。
ここでは、アパレル物流によくある課題について解説します。
物流業務全般の課題については、以下の記事をご参照ください。
>>関連記事:物流アウトソーシングについて徹底解説!業務内容やメリット・デメリットとは
SKUと在庫数が多いため管理が困難である
アパレル物流では、色やサイズの組み合わせが多いため、SKU数が膨大です。SKUとは「Stock Keeping Unit」の略で、在庫管理上の最小単位を指します。これに加え、在庫数そのものも多いため、管理には大きな手間と精度が必要とされます。
EC化が進む現在では、リアルタイムでの在庫情報の把握や、誤出荷を防ぐためのピッキング精度の向上が必要です。SKUの多さによって保管スペースの確保や棚卸し作業の効率化も課題で、システムによる一元管理や自動化の導入によって、管理負担を軽減する工夫が進められています。
商品によって管理に適切な温度や湿度が異なる
アパレル商品は素材によって適切な保管環境が異なり、温度や湿度の管理が不可欠です。たとえば、シルクやウールなどの天然繊維は湿気によるカビのリスクがあり、逆に乾燥しすぎても風合いを損なう恐れがあります。また、直射日光によって色落ちする商品もあり、保管時には日陰や通気性などにも配慮が必要です。
商品ごとに最適な管理環境が求められるため、倉庫全体の空調設定や管理エリアの分割などの対応が発生します。結果として、他業種と比較して保管費用が上がりやすい点もアパレル物流特有の課題です。
季節やトレンドによる在庫数の調整が困難である
アパレル業界では、季節や流行に応じて販売量が大きく変動します。これに対応するためには、在庫の量や種類を予測して調整する必要があります。しかし、消費者の嗜好やトレンドは変化が激しく、予測を外すと大量の在庫が残るリスクもあります。
さらに、商品のライフサイクルも短いため、在庫の翌年持ち越しは難しいケースも少なくありません。SKUが多いうえ、入れ替えの頻度も高いことから、物流現場では常に適正な在庫数の管理と出荷対応が求められます。
返品の対応に時間がかかる
アパレル物流では、サイズ違いやイメージとの相違などの理由で、返品対応の頻度が高い傾向にあります。返品された商品はそのまま再出荷できるとは限らず、検品や再タグ付け、クリーニングなどの工程が発生する場合もあるでしょう。返品処理には手間と時間がかかり、現場の業務負荷が増加します。
また、返品の状態によっては再販できないこともあり、在庫の調整や売上への影響も避けられません。こうした対応を迅速かつ正確におこなうには、専門の作業ラインや管理体制が必要であり、アパレル物流における重要な課題の1つです。
保管・管理に広いスペースが必要になる
アパレル物流では、前述のとおり色・サイズの組み合わせが多く、SKUが膨大になるため、それに応じた広い保管スペースが不可欠です。特に店舗・ECの両方を展開する企業では、在庫の種類と数が増えやすく、保管エリアの確保が難航するケースも多くあります。
さらに、商品がシワや傷みに弱い素材の場合、無理な詰め込みはできません。温度や湿度の管理も必要となるため、倉庫の光熱費や空調費もかさみます。これらによって、アパレル物流では保管と管理費用が高い傾向にあり、費用削減に向けた最適化が求められています。
管理・出荷の工数が多くコストもかかる
アパレル物流では、検針・値札付け・サイズ確認など商品特有の加工や検品作業が求められます。現場ではこうした細かな作業が多く、丁寧な対応が求められます。さらに、色・サイズなどのバリエーションごとに管理の必要があることから、出荷時のピッキングにも時間がかかる傾向にあります。
対応には専門知識や経験が必要であり、一定のスキルを持つ人材の確保も課題です。その結果、作業の工数が増加し、人件費や管理費などの費用が上昇します。アパレル物流においては、効率的な作業体制の構築と、システムを活用した自動化の推進が不可欠といえるでしょう。
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システムの連携可能な業者にアウトソーシングがおすすめ

アパレル物流ではSKU管理の煩雑さや出荷作業の多さなど、業務負担が増大する傾向にあります。そのため、在庫管理システム(WMS)を備えた物流業者へのアウトソーシングが効果的です。特に、受注管理システムやPOSシステムと連携可能な業者を選ぶことで、販売チャネルごとの在庫や売上を一元管理でき、業務効率が大きく向上します。
システム連携によってヒューマンエラーの防止や在庫の最適化も実現できるため、費用削減と顧客満足度向上の両立が期待できます。複雑化するアパレル物流の課題解消には、システム対応力の高いパートナー選びが重要です。
物流のアウトソーシングについては、以下の記事をご参照ください。
>>関連記事:物流アウトソーシングについて徹底解説!業務内容やメリット・デメリットとは
アパレル物流はトレンドに対応できる業者にお任せ!

アパレル物流では、多品種・大量在庫の管理・返品対応・トレンドへの柔軟な対応など、複雑な業務が伴います。このような課題に対応するには、多様な物流業務を柔軟に対応させられる物流パートナーの存在が不可欠です。
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