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自治体における文書管理システムの実情とは?導入が進まない原因と解決策について

2023.08.21
  • 公共BPO

自治体の日常業務で報告書、契約書、仕様書、マニュアル、社内規定などの資料は必要不可欠です。紙媒体のまま管理するのが一苦労な資料を、電子化すれば負担は大きく減ります。

さらに管理の負担を減らすための文書管理システムもありますが、自治体においては導入状況が進んでいません。

本記事では、その理由と解決策について解説します。


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自治体における文書管理システムの導入状況

2009年に「公文書等の管理に関する法律」が制定され、公文書の作成から廃棄まで統一された文書の管理ルールが策定されました。

公文書の整理・保存・管理は各自治体の義務とされましたが、その管理方法は自治体によってさまざまです。公文書は数が膨大であり、保管場所も有限であるためその確保も自治体によっては負担です。
こういった負担を解消する策の1つとして、文書管理システムが開発されましたが、なかなか浸透していない背景があります。

自治体の文書管理システム導入が進まない理由

自治体での文書管理システム導入が進まない理由には、以下の4点が挙げられます。

1.デジタル化への抵抗感が強い
2.紙運用をやめられない
3.庁内でしかシステムを利用できない
4.システムの連携ができない

これら4つの理由について、それぞれ解説します。

デジタル化への抵抗感が強い

デジタル化への抵抗感の強い理由として、特にアナログ文化が地方自治体で根強く残っていることが挙げられます。
デジタル化を図ることは予算もかかりますし、それに伴い新しいITツールの導入も必要です。さらに新しいITツールを導入しても、これまで通りのやり方がよいと思う人や、使いこなせないと導入する前から抵抗する人が多ければ新しいツールも宝の持ち腐れです。

この問題を解消するためには、簡単に使いこなすことができるツールを選択し、実践と教育を行い、少しでもITツールへの不安感や抵抗感を拭っていくことが大切です。

紙運用をやめられない

地方、都市部を問わず各自治体は、紙媒体でたくさんの資料を保管しています。
デジタル化するにあたっては、これまで積み重ねてきた膨大な資料をスキャンしてデジタル化するという大変な作業が発生します。また、取り込むために毎回スキャンを行うのが億劫になる、データ化された資料の視認性が悪くなるなどの問題もあります。
一方で、紙媒体にはデメリットがあります。改ざんのリスク、検索性が低くお目当ての書類を探すことにも一苦労するなどの点です。デジタル化すればセキュリティ、検索性などが高まるため、これらのデメリットを解消できます。

庁内でしかシステムを利用できない

仮に文書管理システムを導入しても、庁内ネットワークや特定のPCからではないと利用できないなどの制限がかかったままでは、使い勝手がよいとはいえません。

昨今、各自治体でもテレワークを行うための環境整備が行われています。テレワークでは利用できない文書管理システムでは導入がためらわれる、あるいは導入しても積極的に利用されないのは目に見えています。
そのため、高セキュリティを保ちながらも場所を限定的にしない文書管理システムの選定が必要です。具体的には電子証明書をインストールしているパソコンからならログイン可能、IDとワンタイムパスワードの使用などが挙げられます。

システムの連携ができていない

文書管理システム以外にも、自治体ではさまざまなツールやシステムが導入されています。それらのツールやシステムと連携が取れていなければ、電子入力した書類を別のシステムに登録するために再度紙出力をする、同じ情報を複数のシステムごとに入力するなどの二度手間が発生してしまいます。

既に導入済みのシステム、今後導入予定のツール、それらを把握したうえで連携して動作する文書管理システムを選べば、このような効率の悪い作業は発生しません。

文書管理システム導入を成功させるポイント

文書管理システム自体は大変有用であり、書類の管理や保管に悩む自治体にとっては必要なツールです。一方で一度に全ての書類をデジタル化しようとする、あるいはデジタル化した後の書類運用計画があいまいなままなどの状態で文書管理システムを導入しても、希望通りの成果は得られません。

ここでは文書管理システムを導入する際に、気を付けるべきポイントについて解説します。

長期的な視点とスモールスタートの両側面を持つ

多くの自治体では、人口減少に伴う職員・財源の減少が予想されています。業務の効率化・低コスト化、書類のデジタル化は今後ますます必要になるでしょう。文書管理システムがその中でどのような役割を求められるか、導入前には長期的な視点が求められます。
また既存の紙媒体の資料をすべて電子化することには、とてつもない時間を要するのは明白です。電子化対象をいきなり全部署に広げるのではなく、電子化の要望が強かった部署から徐々に電子化を進めれば、ノウハウの蓄積や導入コストの削減につながります。

初めは無理せずに、スモールスタートを意識しての導入がおすすめです。

現状把握し導入目的を明確にする

文書管理システムを導入するにあたって、現状の把握と導入の目的を明確にすることが必須です。これは言い換えれば、文書管理システムにどのような機能を最優先して求めるかということです。
例えばデジタル化した文書の使い勝手を求めるなら、文書デジタルの方法から慎重にする必要がありますし、テレワークでも利用しやすいある程度オープンなシステムを求めるならクラウド型、あるいはセキュリティの高いシステムを選ばなければなりません。

このように何を解消したいのか、どの効果を期待しているのかを明確化することで関係者全員で意識を共有することもできますし、民間企業への問い合わせもスムーズに行うことができます。

自治体に文書管理システムを導入する流れ

一言で文書管理システムといっても、その種類も特徴もさまざまです。

ここでは、どのようにして数ある文書管理システムから、自治体のニーズや予算に合ったシステム選定を行っていけばよいのかを解説します。

目的に沿って文書管理システムを選定・比較する

文書管理システムの選定においては、目的に沿ったシステムを抽出する必要があります。このとき抽出の条件となるのは、前述した「文書管理システムにどのような機能を優先して求めるか」です。

抽出ができれば、次に比較を行います。搭載機能・サポート体制・料金・提供形態などが具体的な比較要素です。また製品によっては1ヶ月だけなど期間限定でシステムの無料体験ができるサービスもあるので、民間企業に問い合わせてしてもよいでしょう。
またシステムによって必要とされるIT機器の種類やスペックが異なるので、それらの面でもしっかりと比較を行うことが重要です。

文書管理システムを決定・仕様の見直しを行う

導入する文書管理システムを決定する際には、自治体が求める機能をすべて網羅していても金額が合わない場合や、金額は予算内でも機能が満たしていない場合もあります。
こういったときには、民間企業に見積もりを依頼したり、問い合わせを行ったりしましょう。システムの導入費を予算内に納める相談や、追加プランやオプションの提案などを行ってくれる場合もあります。

民間企業に丸投げした場合、導入後に不満が残るケースがあるので、設計や構築に関しては積極的に希望を出しましょう。
一般競争入札で数多くの民間企業に参加してもらい、そこから自分たちの目的にあったシステムや民間企業を公正に選定することも可能です。

文書管理システムを運用・修正する

導入する文書管理システムが決定したら、導入を行う企業による自治体へのヒアリングや、現場調査などを通じての詳細設計などを行う作業へと移ります。
ヒアリングの場では、民間企業に対して「こういった機能を望んでいる」という要望をしっかりと伝えることが大切です。ヒアリングの回数を重ねて、内容を詰めていくことで運用開始時に求めていた機能が使えないなどの問題発生を防ぐことができます。

運用方法については、庁内のデジタル関係に強い部署で運用するのか、それとも民間企業の社員が常駐して運用するかなども決める必要があります。

導入後に費用対効果を測定する

文書管理システムは、導入しただけで終了ではありません。
導入・運用後に、費用対効果を測定する必要があります。導入後と導入前を比較し、作業の時間短縮につながっているかなど、課題として挙げられていた解決に効果を発揮しているかを確認しましょう。

効果を測定して前後で比較するために、あらかじめ資料の捜索時間などを測定しておけば、数字で導入効果の確認ができます。

文書管理システムの主な機能

文書管理システムについて、どのような機能を実装しているのかをご紹介します。

主な機能としては、保管、検索、アクセス管理・セキュリティ、バージョン管理などが挙げられます。

保管機能

文書管理システムの基本的な機能の1つとして、保管機能があります。
部署単位や種類単位で保管を行え、電子化したドキュメントをPDF、Word、ExcelやPowerPointなどの形式で保管が可能です。また、OCRという紙媒体の文書をスキャンすることでテキスト化ができる機能も備えていれば、文書内容の電子化も容易にできます。

これらの機能によりパソコンと紙媒体どちらで作成した文書であっても、同じようにデータとして管理を行うことが可能です。

検索機能

保管されているデータに付与されている情報を基に、検索を行えます。
例えば「総務課」で作成した「決算資料」を検索したい場合は、これらのキーワードを使い全文検索や完全一致検索、あいまい検索などの検索方法を使うことによって探し出したい資料を見つけられます。

このようなキーワードを用いる検索方法の他にも、テキスト保管時に作成されるインデックスと呼ばれる索引データを用いて検索を行う方法もあります。

アクセス管理・セキュリティ機能

作成した資料を改ざんや勝手に持ち出されるのを防ぐため、アクセス管理やセキュリティは重要です。

アクセス管理では、アクセス権限を付与された人物や特定部署の人のみが閲覧や修正を行えないようにする設定が可能です。テキストにあらかじめパスワードを設定しておくことで、パスワードを知っている人しか閲覧できないようにもできます。
この他にダウンロードや印刷の制限、特定のデバイスからでのみ閲覧ができるなどの保護機能を備えているシステムもあります。

バージョン管理機能

更新頻度の多い資料を扱う際に欠かせないものとして、バージョン管理があります。

編集履歴をデータとして残しておくことによって、最新版のデータをすぐに確認することや、間違って入力してしまったものを元の状態に戻すこと、誤ってデータを消してしまった場合でも復元などが可能です。
その他にもだれが、どこで、いつ編集をしたのかという履歴として残せるため、トラブル防止や万が一トラブルが発生してしまった場合における解決の手助けになります。

文書のライフサイクル管理機能

文書のライフサイクル管理は、法律によって保管期限のある資料を自動で廃棄したりできる機能です。文書の作成、活用、保管、検索、改訂、廃棄という一連の流れをシステム化できます。

書類が不要になったことを通知する、自動で更新や削除を行うなどの動作が可能なので、重要な資料を含めてより容易に文書が管理できます。廃棄処理を自動で行えば、保存容量を気にする必要もありません。

ワークフロー機能

ワークフロー機能は、文書の申請・承認・確認などを簡素化・完全システム化する機能です。従来であれば、上司の席へ直接出向いて行っていた確認作業も不要になり、ペーパーレス化も期待できます。

押印が必要な書類でも、ワークフロー機能でどこからでも素早く承認を上司から得られます。ソフトによっては、スマートフォンや外部にいても承認ができるものもあります。テレワーク中でも、簡単に上司の承認を得られます。

外部システムとの連携機能

文書管理システムは、他のシステムと連携が可能なものが多くあります。例えばファイルサーバや会計システムなどのシステムと連携させることで、より便利に使えます。

会計システムと連携させれば、決裁文書が承認されたら自動で会計システムに転送する、といったことも可能です。
外部システムと連携する際には、システム同士が本当に連携させることが可能なのかを導入前にあらかじめ検証・確認しておくことがポイントになります。

まとめ

文書管理システムは、膨大な資料を管理する上で非常に役立ちます。ただし、導入時にしっかりと目的と問題の把握が行われていなければ、運用の際にトラブルの元になります。
また、運用方法や保守サービスについても綿密に調整し、契約を行っておかなければトラブルが発生してシステムが止まってしまい、業務に支障が出てしまう恐れもあります。

こういった危険や不安視される部分を無くすためには、文書管理システム導入前に専門家に相談するのがおすすめです。


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