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地方自治体におけるテレワークの現状と問題点|テレワーク導入を妨げる原因と解決策とは

2023.08.21
  • 公共BPO

地方自治体におけるテレワークの現状は、一部の自治体では導入が進んでいるものの全体的な普及率はまだ低いとされています。

その背景には様々な問題点があり、それらを解決するための取り組みが試行錯誤されているのです。

本記事では、テレワーク導入を妨げる原因と解決策を解説します。

出典:総務省「地方公共団体におけるテレワークの取組状況調査結果の概要」


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地方自治体のテレワーク導入の現状

2020年に総務省が実施した地方公共団体のテレワーク取り組み状況の調査結果では、導入している地方自治体の割合は増加しています。
テレワーク導入の主な理由は、交通渋滞の緩和や地域活性化、労働環境の改善、コロナの感染リスクを軽減するため、などが挙げられます。
また一方で、情報セキュリティ対策の強化や、テレワークで可能な業務に限界があるなどの課題があるのも事実です。これらの課題には、早急な取り組みが必要とされています。

都市と地方とでは導入率に開きが存在

政令指定都市では100%の導入率が報告されている一方、政令指定都市以外の地方公共団体では導入率は21.7%に過ぎず、78.3%は今後の導入予定なし、または未定となっています。

このような状況が生じた要因の1つに、地方では在宅勤務以外のテレワークがあまり採用されていないことが挙げられます。テレワークが主に感染対策として進められた結果、「テレワーク=在宅勤務」というイメージが広がり、在宅ではできない業務でテレワークが普及していないと考えられます。

導入されていても利用率は高くない

テレワークが実施可能な環境にある職員のうち、実際にテレワークを利用している職員の割合は、30%未満が54.4%と半数以上を占め、80%以上の利用率を持つ団体は全体の2.2%に過ぎません。
以上の数字から、地方自治体ではテレワークが導入されている場合でも、十分に利用されていない現状が見て取れます。

これらの問題を解決するために、職員に対してテレワークのメリットや適切な利用方法、効果的な働き方についての啓発と教育を行う必要があります。

地方自治体でテレワークが導入されない原因

総務省の調査では、テレワークを導入しない理由についてのアンケートも行われています。
テレワークが導入されない主な理由としては、以下が挙げられています。

・業務内容がテレワークに馴染まない
・情報セキュリティに対する懸念
・導入にコストがかかる
・労務管理、人事評価が難しい

各要因について、解説します。

業務内容がテレワークに馴染まない

地方自治体における一部の業務では、対面でのやり取りや直接的なコミュニケーションが必要な手続きが多く、テレワークを適用できない場合があります。
また、業務に必要な書類や文書がまだペーパーレス化されていない場合、テレワーク環境では書類や文書を参照できず、業務の遂行に支障が生じる可能性があります。

これらを改善するには、業務プロセスの見直し、ペーパーレス化の推進、オンラインツールの活用などを進めていかなければなりません。

情報セキュリティに不安がある

テレワーク導入がためらわれる原因の1つは、情報セキュリティに対する不安です。
具体的にはマイナンバーを含む個人情報を扱う業務において、情報漏洩が起きた場合のリスクが非常に高くなる点が、導入にブレーキを踏ませる大きな要因となっています。

この不安を軽減しテレワーク導入を進めるには、セキュリティ対策の強化を徹底することが先決です。アクセス制御や暗号化、VPN(仮想プライベートネットワーク)などのネットワーク接続を導入し、外部からの不正アクセスや情報漏洩を防ぎます。
また、個人データの取り扱いルールを策定することも重要です。個人データの取り扱い方を明確に定め、職員に対して遵守を徹底させます。

導入にコストがかかる

テレワーク導入には庁舎内のネットワークに外部から接続できるシステムの構築に加え、新しい勤怠管理システムやコミュニケーションツールの導入などのコストがかかります。
また、新しいシステムやツールに対応できる人材を育成するためのトレーニングや教育プログラムも必要です。これらの人材開発にも、時間と費用がかかるのです

労務管理・人事評価が難しい

従来のタイムカードなどでの出退勤管理では、テレワーク時の労働時間を正確に把握することが難しくなります。
また、上司が直接目で業務を確認できないため、業務内容の管理や進捗状況の把握が困難になります。コミュニケーションの遅れや情報の共有不足も問題となるでしょう。
加えて、一部の職員がテレワーク時にサボるなどの問題も発生する恐れがあり、逆に長時間労働が増える危険性もあります。

これらの対策としては、テレワークに対応した労務管理・人事評価のための新たなシステムの導入と、それに伴う柔軟な労働時間管理や、コミュニケーションの強化対策が必要です。

そもそもテレワークとは

2021年に総務省が発表した「地⽅公共団体におけるテレワーク推進のための⼿引き」では、テレワークを在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークの3種類に分類しています。
以下ではそれぞれの勤務形態について、詳しく解説します。

出典:総務省「地⽅公共団体における テレワーク推進のための ⼿引き」

在宅勤務

テレワークといわれたとき、最も想起されやすい形態が在宅勤務です。職員にとっては通勤時間の削減や柔軟な働き方の選択肢を提供し、ワークライフバランスの改善にも役立ちます。
また、オフィスでの騒音や他の職員との接触など、集団勤務に伴うストレスや誘因を軽減できる場合もあります。
一方で、在宅勤務では社内のコミュニケーションや情報共有が難しくなる側面もあります。適切なチャットツールの導入や、オンライン会議の活用が必要不可欠です。

サテライトオフィス勤務

サテライトオフィス勤務とは、自宅以外の出先機関や公共施設などでパソコンなどの機器を利用して業務を遂行する働き方です。
既存のイントラネットやVPNなどのネットワークを活用することで、専用のネットワーク環境を構築せずにテレワークを実現できます。

また、サテライトオフィス勤務は勤務地域を分散できるため、災害時の備えにもなります。
突然の災害によってオフィスが利用できなくなった状況でも、職員は別の場所で業務を継続できるのです。

モバイルワーク

モバイルワークとは、外出先や出張先、移動中などでノートパソコンやモバイルデバイスを利用して業務を行う働き方です。移動時間や待ち時間を有効活用して業務を進められます。
また、出張先での業務も本庁との接続を活用することで、上司の判断を仰ぐことや迅速な対応を行うことが可能です。オンライン会議やチャットツールを利用してコミュニケーションを取り、リアルタイムで情報共有や意思決定ができます。

地方自治体がテレワーク導入時に活用すべきツール

テレワークを導入する際には、様々なツールを活用できます。それらはテレワーク環境をサポートし、コミュニケーションや業務効率の向上、セキュリティの確保などに貢献します。
ここでは、地方自治体がテレワークを導入する際に活用すべきツールをいくつか挙げていきましょう。

出典:総務省「テレワーク先駆者百選 取り組み事例」

ノートPCやタブレットなどのモバイルツール

ノートPCやタブレットは、場所に縛られずに職場のPCにもアクセスでき、環境が整っていれば職場のPCも操作できるツールです。モバイルWi-Fiなどを活用することで、最低限の環境を整えれば勤務地にあるデータに外部からアクセスできます。
これによりデータを持ち歩く必要がなくなり、セキュリティ対策も強化されます。

モバイルツールは、地方自治体のテレワーク環境において柔軟性と便利さを提供し、効率的な業務遂行をサポートしてくれるでしょう。

Web会議システム、チャットアプリなどのICTツール

ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、ICTツールとは情報通信技術を利用したツールの総称です。

ICTツールを利用することで、テレワークの方同士や勤務地に出勤している方との間で緊密なコミュニケーションを取るために不可欠です。チャットアプリを使用することで、リアルタイムでのメッセージのやり取りやグループチャットが可能になり、業務の連携や情報共有がスムーズに行えます。

勤務管理ツール

一般的な勤務管理ツールには、出退勤時間や有給休暇の取得状況など勤務データの管理機能や、給与計算や勤怠管理の機能があります。

従来のタイムカードに頼る方法ではなく、勤務管理ツールを活用することで、テレワーク従事者の勤務時間や出勤状況を適切に把握できます。
また、ツール上での勤務データの自動集計や給与計算の自動化などにより、業務の効率化や人的コストの削減にもつながる可能性がある便利なツールなのです。

LGWANとは

LGWAN(Local Government Wide Area Network)は、地方公共団体の組織内ネットワーク(庁内LAN)を相互接続するための総合行政ネットワークです。個人情報を扱うことが多い地方公共団体のために、インターネットから分離した行政専用のネットワークなのです。

インターネットから分離されているため、LGWAN上のファイルをインターネットでやり取りする場合、あるいはその逆の場合に手間がかかるというデメリットはありますが、地方公共団体で設備やシステムへの投資が重複して行われない、災害時を想定した環境設備がされている、何より高いセキュリティを備えているなどさまざまなメリットがあります。

LGWANを介した様々な行政サービスを民間企業も提供しており、それらはLGWAN-ASPと呼ばれています。複数の企業がLGWAN-ASPを提供しており、地方公共団体も利用できます。

出典: J-LIS 地方公共団体情報システム機構「LGWAN-ASPとは?」

地方自治体のテレワーク導入例

地方自治体では、テレワークを通じて業務の効率化や柔軟な働き方を実現するとともに、災害時の対応や感染症対策などにも活用されています。

地方自治体のテレワーク導入では具体的にどのような取り組みをしているのか、以下に3つの例を挙げてみました。

出典:総務省「地方公共団体におけるテレワーク取組事例」

佐賀県

佐賀県では2008年からテレワークを推進しており、特に豪雨災害の発生時や新型コロナウイルスの感染拡大時など、災害時や緊急事態に備えた柔軟な働き方を実現しています。

2013年にはテレワーク導入の実証実験としてタブレット端末100台を配布、2017年にはWebカメラ・イヤフォンマイクを全職員に配布するなど、テレワークが可能な環境整備のため積極的にモバイルツールが利用されています。

徳島県

徳島県では、在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークの3種類のテレワークがバランスよく行われています。特にサテライトオフィスの環境には定評があり、2016年には県庁4階にサテライトオフィスを開設、現在もサテライトオフィスは増加中です。
また県庁では「サテライト・デイズ」と称し、150人規模でテレワークを一斉に行う取り組みが2年連続でなされています。在宅勤務中の職員とのWeb会議はもちろんのこと、民間企業や市役所との打ち合わせもリモートで対応可能です。

愛媛県西条市

愛媛県西条市では、特に教育・学校施設に関するテレワークが進んでいます。市町村合併をきっかけに職員室の校務を電子化、さらに校務支援システムの方式を統一し、パブリッククラウドに展開することで利便性が大幅にアップしました。

その結果、校務の省力化による教職員のワークバランスの改善、生徒の学力向上を実現しました。校務支援システムの統一とテレワークの推進は、全教職員アンケートでも高い満足度を示しています。

まとめ

地方自治体がテレワークを導入する際には、いくつかのハードルが存在しますが、それに対応するための対策もあるということがお分かりいただけたと思います。

地方自治体が総合的な戦略を策定し、テレワーク導入のメリットと課題を的確に把握し、適切な対策を講じることが求められるのです。


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