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EC物流の動向と、業界を取り巻く課題と解決方法について

2023.10.17
  • EC総合支援

EC市場の需要拡大により、物流市場も年々成長しています。今回は、市場規模が拡大した要因や、今後の動向についてくわしく解説します。物販販売やデジタル販売が拡大する中でのEC物流の課題や、最適化のためのヒントも取り上げますので、ぜひ参考にしてください。


EC物流とは

EC物流とは、ECビジネスを支える物流全体のことを指します。企業によっては、EC物流を自社で行う場合もありますが、近年はアウトソーシングする企業も増えています。一般的なEC物流の中心業務は、以下のとおりです。
・入荷、入庫作業
・検品作業
・棚入れ、保管作業
・ピッキング作業
・梱包、出庫作業
・返品対応

EC物流の4つの特徴

EC物流は、一般的な物流とはいくつかの点で異なります。以下に、その主な特徴を述べます。

多岐にわたるBtoC配送先の増加

1件当たりの数量は少ないが、同じ取引先にまとめて商品を送る「BtoB」に比べて、企業が一般消費者を対象とする「BtoC」は取引が多く、配送先が多岐にわたっているという特徴があります。

ギフトラッピングなど梱包加工も必要とされる

ギフトとしての購入が多いEC物流では、お中元やお歳暮、季節のイベント用に商品を購入する顧客が多いです。そのため、ギフトラッピングや特別な包装サービスのニーズが高まっています。また、顧客のニーズに応えるため、メッセージカードやのしの準備も必要に応じて検討しなければなりません。梱包作業の質も重要で、緩衝材や包装材の適切な選定も求められます。顧客満足度を高めつつも、指定日までに確実に届けられるよう、効率的な作業が求められます。

ブランドイメージの向上の効果が期待できる

商品を手にする瞬間は、顧客にとって特別な時間となります。そのため、競合他社に差をつけるために、自社ブランドの包装資材を使うなどの工夫が重要視されています。荷物を開ける喜びにブランドの価値をプラスすることで、インパクトを残すこともできるでしょう。ロゴ入り段ボールや独自シールを活用する事業者も増加しています。EC物流は工夫次第で、注文から到着まで一貫した強力なブランドイメージを与えることができます。

フルフィルメントサービスに関する一連の業務をアウトソーシング可能

EC物流において、受注から顧客への配送までの業務全般を「フルフィルメント」と呼びます。フルフィルメントサービスを提供する企業も増えており、これによりEC物流に関する一連の業務をアウトソーシングすることが容易になっています。

EC物流の市場規模と動向

EC物流市場は年々拡大しており、BtoC向けの小口配送も急増しました。市場規模が拡大する要因について、今後の動向も含めて解説します。

スマートフォンが普及したこと

スマートフォンの普及に伴い、デジタルシフトが急激に進んだことによって、個人のEC利用率が急拡大しています。パソコンとスマートフォンの大きな違いは、アプリ利用が可能な点です。スマートフォンではプッシュ通知を活用できるなど、情報を提供しやすくなりました。ユーザーは、プッシュ通知をメールよりも閲覧する傾向があります。この使い勝手の良さが、EC利用の拡大を後押ししているといえるでしょう。

SNSが生活に浸透したこと

スマートフォンの普及とともに、SNSが急成長しています。特に、若者を中心としたトレンドの拡散力が増大しているのも、市場拡大の大きな要因となっています。いまやSNSはEC市場の最重要マーケティングツールとなっており、EC物流のBtoC市場に大きな追い風をもたらしています。なかでもYouTubeなどの影響は非常に大きく、効果は絶大です。

コロナウイルスの影響により巣ごもりが起きたこと

個人のECサイト利用率を後押ししたのが、新型コロナウイルスの感染症拡大の影響による巣ごもり需要です。出勤・通学、外出を控えるなか、感染症拡大の対策として、ECサイト利用が推奨されました。巣ごもり需要の結果、物販系の大幅な市場拡大につながったといわれています。

物販販売のEC市場の拡大

経済産業省の調査*によると、日本のBtoC市場は以下の3つに大別できます。そのなかで、物販系のEC市場は、2013年から2021年の間、持続的に拡大しています。

日本のBtoC市場
物販系 食品・飲料、生活家電・AV機器、雑貨・家具、衣類、化粧品・医薬品、自動車・自動二輪車など
サービス系 旅行、飲食、金融、チケット販売、理美容系、フードデリバリー、医療、保険、住宅関連、教育など
デジタル系 デジタル系
電子出版(電子書籍や電子雑誌)、有料音楽・動画配信、オンラインゲームなど

特に、2019年から2021年にかけては、市場が大きく変動しました。この急激な成長には、コロナ禍による巣ごもり需要が大きく影響しています。しかし、この期間中、国内の物品購入総額はほぼ変わらなかったことから、購入量が増えたわけではなく、購買の場がEC市場に移行したことが主な要因であると分析されます。

今後は感染リスクが低下し、コロナ以前の日常が徐々に戻ってくると予想されています。実店舗での買い物や観光も再び日常化することで、EC市場の拡大ペースが鈍化する可能性もあるでしょう。

デジタル販売のEC市場規模

デジタル系分野は、物販分野を上回る成長率を示しています。経済産業省の調査*によると、日本のBtoC-EC市場規模におけるデジタル分野の市場規模は、2013年の1兆1,019億円から2021年には2兆7,661億円と、約2.5倍に拡大しました。特に2021年は、前年比で12.38%増加しています。スマートフォンやタブレットの普及、そして巣ごもり需要による影響も大きいため、コロナ禍が収束した後もこの勢いが続くかどうかはわかりません。

*参考:経済産業省|令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書

EC物流の課題

EC市場が拡大する一方で、EC物流は以下のような課題も抱えています。

正確でスピード感のある対応

顧客満足度を維持するためには、正確でスピード感のある対応が欠かせません。商品が遅れると、顧客の関心が薄れる可能性があり、キャンセルされたり競合他社に乗り換えられたりする恐れもあります。EC物流は複雑な工程で成り立っているため、それぞれの工程で正確さや丁寧さが求められます。注文数が増加すると作業量が増え、対応スピードの低下につながることもあるでしょう。適切な人員配置やシステムの導入が求められる一方で、迅速な対応だけではなく、正確さも求められます。スピードと正確さ、この二つを両立させることが不可欠です。

宅配網維持のための料金改定

EC市場の成長に伴って荷物の数量が増え、配達ドライバーも不足しており、企業や顧客が望むEC物流を維持するのが難しくなっています。現在の宅配網を保つには、配送業者は料金を見直して値上げせざるを得ません。料金改定は、送料の値上げに直結するため、EC事業者は適切な対策を練る必要があります。

在庫管理システムの検討

キャッシュフローに直接結びつく在庫管理は、経営に大きな影響を及ぼします。また在庫管理は、顧客とのトラブルを防ぐためにも重要です。例えば、在庫がない状態で注文を受けてしまったり、予定の在庫が見つからず発送が遅れたりといったトラブルは、発送の問題だけでなく、サイトの評判にも影響します。在庫管理のズレをなくすためには、フロントとバックヤードの連携が不可欠です。必要に応じて、在庫管理システムの導入をすることも検討するべきでしょう。

保管用のスペース確保

EC市場が拡大したため、多くのEC企業が商品の保管スペースの確保に課題を抱えています。商品の保管スペースの確保は、高額な費用がかかるため、全体の性能や効率を低下させる要因や障害となります。また、商品のバリエーションを増やしたい場合や、新しい商品を導入すると更なる保管スペースの確保が必要となります。

EC物流を最適化するために行いたいこと

EC物流を最適化するためには、以下の取り組みが効果的です。

プロセスの見直しと改善

EC物流の課題解決に向けて、まずは現状を明確に把握しましょう。自社にとっての課題を正確に把握することが、最適化のカギとなります。また、業務プロセスの見直しも必要です。現行プロセスを徹底的に洗い出し、改善すべき点を検討しましょう。増加した注文に既存の方法で対応可能か、従来の方法が適切かどうかも、再評価が必要です。

意見の収集と対策

改善の際には、現場のスタッフの声を重要視しましょう。経営陣のみの決定では、現場に即した対策にならない可能性があります。スタッフからの意見を取り入れ、プロセスを行いやすく改善することが大切です。

コストの可視化

EC事業の改善には、物流指標を明確に示すことが不可欠です。特に、EC物流のコストを「固定費」と「変動費」に分類して可視化することで、売上高や粗利において変動費の占める割合を把握しやすくなります。数値の可視化と自社共有によって、全従業員が共通の物流指標を把握できるようになり、全体の利益につなげていくことができるでしょう。

物流システムの導入

EC物流の拡大に対応するためには、物流システムの導入も効果的です。物流システムを利用すると、物流に関する工程を一元管理でき、効率的な業務が実現できます。ただし、いままでの業務フローとは異なる点が多いため、導入の際は、サポート体制が整った企業に依頼することも重要です。

物流アウトソーシングによる外部委託

全ての物流業務を自社で処理することが難しい場合は、先にご紹介したフルフィルメントサービスなどの物流アウトソーシングを活用するのも有効です。特定の物流業務をアウトソーシングすることで、例えば「在庫が増えてスペースが足りなくなった」「物流業務に必要な人手が不足している」といった課題を解決する助けとなります。

物流アウトソーシングは、物流に関連する人件費や管理費のコスト削減にもつながります。物流業務が日々複雑化しているなか、アウトソーシングすることで、企業は主要な業務に集中できるようになるでしょう。

まとめ

日本のBtoC市場は拡大を続けていますが、EC物流にはまだまだ多くの課題があります。EC物流を最適化する方法についてもご紹介したので、ぜひ自社のプロセスの見直しと改善を進めることをおすすめします。必要に応じて物流システムの導入や物流アウトソーシングを検討してください。


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