自社ECサイトにおけるKPIとは?基本項目や設定方法を解説

ECサイトの売上を伸ばす際、目標設定が重要視されます。今回は、ECサイトの目標設定で活用するKPIについて、基本項目や設定方法を解説します。ECサイトの担当者はぜひ参考にしてください。
目次
- KPIとは重要業績評価指標のこと
- ECサイトにおいてKPIが重要視される理由
- KGIやKSFとの違いについて
- ECサイトにおけるKPIの主な項目5つ
- セッション数
- 回遊率
- 顧客の商品購入率(CVR)
-
客単価
- 直帰率
- ROAS
- ECサイトにおけるKPIツリー
- ECサイトにおけるKPI設定時のポイント
-
SMARTの原則に従いKGI・KPIの指標を立てる
- 立てた指標に対してPDCAを実行する
- ユーザーシナリオも考えておく
- ECにおけるKPI設定の手順
- ①KGIを設定する
- ②KGIを達成するためのプロセスやKPIを決める
- ③KPIをチーム・個人に落とし込む
-
④KPIツリーとの整合性を確認し運用を始める
- EC担当者のKPI目標と施策例
- セッション数を上げたい
- 回遊率を上げたい
- CVRを向上させたい
- 客単価を上げたい
- 直帰率を改善したい
- ROASを改善したい
- ECサイトのKPIを設定して売上が伸びた成功例
- アパレル
- 美容・コスメ
- 定期的な観測と状況に合わせたPDCAを繰り返す
-
KPI設定が難しい場合はツールの導入からでも
- KPI設定はECサイト運営に不可欠
KPIとは重要業績評価指標のこと

KPIとは、重要業績評価指標のことです。事業の目標に対して、プロセスを具体化した数値です。例えば、ECサイトにおける1か月の売上目標に対して、その目標に到達するために必要なプロセスや対策が該当します。
KPIは、事業の進行度合いを視覚で分析できる指標であり、ECサイトの運営以外でもよく使用されます。目標とプロセスを分けて考えるため、客観的な視点で業務を効率化できるでしょう。
ECサイトにおいてKPIが重要視される理由
ECサイトにおけるKPIとは、「サイト内の商品を・誰が・いつ・なぜ購入したか」をさします。
KPIを設定しなければこれらの分析はできません。もし、KPIを設定せずにサイト内の状況を把握しようとしても、主観的な憶測や仮説が入り、客観的な視点が欠けるでしょう。KPIを設定することで、主観を抜きにして、顧客の動きや売上増減の理由を分析できます。
KGIやKSFとの違いについて
KPIと並んで使用される言葉にKGIやKSFがあります。それぞれの言葉の意味とKPIとの違いを紹介します。
KGIとは、「重要目標達成指標」をさす言葉です。プロジェクトを開始したときに設定する最終目標値です。ECサイト内であれば、月間売上目標や月間契約数、問い合わせ数などが当てはまります。
KSFは、KGIを達成するための「重要成功要因」です。目標を達成するための要因が何かを言語化します。例えば、「月間契約数◯%アップ」のKGIを設定したとき、「顧客を開拓する」「契約料金を下げる」などがKSFです。
KSFを設定したあとに、具体的な数値目標であるKPIを設定します。
ECサイトにおけるKPIの主な項目5つ

ECサイトにおけるKPIの項目を5つ紹介します。これらの項目の内容と数値の算出方法を把握しましょう。
セッション数
セッション数とは、自社ECサイトを訪れる訪問数です。関連している数値として、PV数(ユーザーのページ訪問数)やアクセス数(ユニークユーザーを含めた数)などもあります。
サイト内の顧客満足度が高くても、セッション数が少なければ売上は伸びません。
回遊率
回遊率とは、ECサイトを訪れたユーザー(セッションしたユーザー)がどれだけページを閲覧したかをさす数値です。
算出方法
回遊率=PV数÷セッション数
回遊率が低い場合、サイトのページに魅力が少ないことを意味します。
顧客の商品購入率(CVR)
CVRは、ECサイトを訪れたユーザーの内、何割の人が商品を購入したかを表す数値です。
CVRを改善できれば売上が伸び、KGIの達成にも近づくでしょう。
算出方法
購入率=注文件数÷アクセス数
客単価
客単価とは、1人の顧客が1回の取引で支払った金額をいいます。
客単価があがれば、全体の売上向上にもつながります。
算出方法
平均客単価=合計売上÷注文件数
直帰率
直帰率とは、訪問者がECサイトを1ページだけ閲覧してサイトを離れる割合です。直帰率が高い場合、回遊率やCVRが低くなり売上につながりません。
直帰率が高い理由として、サイトの導線が分かりにくい、検索してはじめに出てきたページに満足して離れた、などがあります。
算出方法
直帰率[%]=直帰数÷セッション数×100
ROAS
ROAS(Return on Advertising Spend)とは、広告の費用対効果のことです。あくまでも広告費用と売上のみから算出する指標であり原価や人件費は考慮されていないため、100%では赤字ということになります。
算出方法
ROAS[%]=広告経由売上÷広告費×100
ECサイトにおけるKPIツリー

KPIツリーとは、最終目標であるKGIを達成するためのKPIを分析して、ロジックツリー構造で図式化したものです。ツリー化することで、それぞれの項目が分かりやすく可視化されます。
KPIツリーはチームで情報を共有するときにも活躍します。
ECサイトにおけるKPI設定時のポイント

KPIツリーが図式化できたら、各段階でのKPI設定が可能になります。KPIと達成するための施策を設定する際は、以下の3つのポイントを押さえてください。
SMARTの原則に従いKGI・KPIの指標を立てる
SMARTの原則は、目標達成のために欠かせない5つの成功因子です。以下の5項目を意識してKGIとKPIを決めましょう。
Specific(具体的な) | 誰が見ても同じ認識ができるような、具体的な内容であること。 数値が曖昧な場合、社員によって認識にズレが生じることもあります。 |
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Measurable(計測可能な) | 設定した指標が計測できること。 数値で測れない内容は、指標として成立しません。 |
Achievable(達成可能な) | 現実的に達成可能であること。 売上を急激に伸ばしたいからといって、「前年比150%」は現実的ではありません。 社員のモチベーション維持のためにも、達成可能な目標を設定しましょう。 |
Relevant(関連した) | KGIと関連した指標であること。 最終目標であるKGIと内容が離れてしまうと適切な目標設定とはいえません。 |
Time-bounded(期限を定めた) | KPIの達成に期限を定めること。 目標とその期限を設定することで、それまでの日数やプロセスを逆算して今取り組む業務が分析できます。 |
立てた指標に対してPDCAを実行する
KPIを設定するためには、ECサイト内の現状について仮説を立てる必要があります。
例えば、以下のような仮説が該当します。
・顧客単価は高いがセッション数は少ない
・回遊率は高いがCVRにつながっていない
サイトの問題点に関する仮説を立てると、解決策が見出せるでしょう。
仮説の問題点を意識しながらKPIを設定します。そして、仮説に基づいたKPIごとにPDCAを実施してください。そうすることで仮説の検証ができ、問題の改善ができます。
ユーザーシナリオも考えておく
ユーザーシナリオとは、ユーザーがECサイトまでたどり着くときの仮説です。ユーザーシナリオの分析は集客・CVRにつながります。
例えば、夏から秋へ移り変わるとき、秋冬用の服やコートが欲しくなります。サイトで季節を先取れば、ターゲットへ商品の詳細や写真を届けられるでしょう。また、新生活が始まる時期に家電・家具のページを充実させると、消費者の購入意欲を刺激します。
購入経路や購入までのページについて緻密なユーザーシナリオを設定できれば、ユーザー目線のサイト構築ができます。
ECにおけるKPI設定の手順
適切なKPIを設定するには、いくつかの段階に分けて考えながら決めることが重要です。
ここでは、ECサイト運営におけるKPI設定の手順について紹介します。
ECサイト運営時の参考にしましょう。
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①KGIを設定する
KPIを設定したいときは、自社の課題から最終的に達成したい目標(KGI)を事前に設定します。
サイト運営の目標であるKGIが明確でなければ、KPIの設定に辿り着けません。
KGIを設定することで、サイトの運営において目指す方向が明確になり、適切なKPIを決めやすくなります。
ECサイトでは、売上の目標や契約数、問い合わせ数などが代表的なKGIです。
週間・月間・年間など期間を決めて、適切なKGIを設定しましょう。
②KGIを達成するためのプロセスやKPIを決める
KGIを設定したら、達成のためにどのようなプロセスが必要なのかを考える必要があります。
KGIを達成するために経るプロセスを取捨選択し、本当に必要なプロセスだけにすることで、無駄の少ない運営が実現可能です。
必要なプロセスが分かれば、自ずとKPIも設定できるでしょう。
ECサイトでは、セッション数や客単価などがよく重視されるKPIだといえます。
目的達成に必要な数値を割り出し、どの項目がどの程度必要なのかを把握しましょう。
③KPIをチーム・個人に落とし込む
達成したいKGIやそのために必要なKPIを導き出せたら、具体的に達成すべきKPIの数値を設定しましょう。
ECサイトでは、「1カ月の売上〇〇円以上」「アクセス数〇〇人以上」などが設定されるKPIの例として挙げられます。
KPIの目標を設定するときは、チーム全体の目標を決めた後に個人の目標に落とし込みます。
個人の得意不得意や仕事歴など、さまざまな要素を見極めて適切な数値を決めることが重要です。
④KPIツリーとの整合性を確認し運用を始める
最終目標とするKGIを頂点とし、その下にCSF・KPIがある3重構造を、「KPIツリー」と呼びます。
KPIツリーは、整合性がとれないと目標が達成できません。
売上向上を目指しているECサイトでは、「KGI:前年比と比べて売上〇〇%向上を目指す CSF:顧客の数を増やす KPI:新規顧客を〇〇社募集する」というKPIツリーが考えられます。
定期的に進捗を確認すると、PDCAサイクルを回しやすくなり、従業員のモチベーションの維持・向上につながるでしょう。
EC担当者のKPI目標と施策例
ECサイトにおいてKGIを達成するには、適切な施策を行うことが重要です。
ここでは、ECサイトにおいてよく設定されるKPI目標と、達成のために行われる施策の例を紹介します。
サイト運営の参考にしましょう。
>>ECサイトの売上をアップさせる施策とは?ユーザー目線のサイト作りを
セッション数を上げたい
ECサイト運営においてよく設定される目標の1つが、セッション数の向上です。
ECサイトに訪れる人には、大きく分けて新規顧客とリピーターの2種類がいます。
セッション数を上げるには、新規顧客を増やしつつ、リピーターの割合が増えることも意識しなくてはなりません。
新規顧客を増やすためには、Web広告の利用が効果的だといわれています。
また、リピーターを増やすためには、メールマガジンやSNSなどで有益な情報を発信することも効果があります。
回遊率を上げたい
Webサイトにおいて回遊率とは、訪問した人がWebサイトにおいてどの程度のページを閲覧したかを示す指標です。
回遊率が高いと、訪問者がWebサイトの内容に興味を抱き、長く滞在していることが分かります。
ECサイトの回遊率を上げるためには、ユーザーに合わせてパーソナライズした表示を行うとよいでしょう。
また、よい情報が表示されていても、邪魔な表示や不快な表示があるとユーザーは離脱しやすくなります。
そのため、ユーザーがストレスに感じる原因を排除することも重要です。
CVRを向上させたい
CVRは、ECサイトに訪れた人のうち、商品を購入した人の割合です。
ECサイトに訪れる人が増えたとしても、CVRが向上しない限り、売上の改善は望めないといえます。
CVRを向上させるためには、ECサイトへの入場から購入までの流れをスムーズにできるようなECサイトを設計するとよいでしょう。
また、購買意欲を促進させる文言の導入やキャンペーンを行うこともおすすめです。
「期間限定」「売れ筋商品特集」などの表記があると、ユーザーの気を惹きやすくなります。
客単価を上げたい
多くの人がECサイトに訪れ、CVRも高い状態であっても、客単価が低いと高い売上を上げるには時間がかかります。
そのため、客単価の向上も意識すべき目標の1つです。
顧客に多くの商品を買いたいと思ってもらうためには、ポイント制や一定金額以上の購入で送料無料などを導入するとよいでしょう。
また、クロスセル・アップセル・セット販売なども効果があります。
また、商品をカートに入れたときに関連するおすすめ商品を表示すると、買い忘れていたものを思い出してもらえたり、新たに興味を持ってもらえたりします。
直帰率を改善したい
ECサイトにアクセスしてもらえても、サイトの構成が分かりにくかったり、必要な情報が見つけられなかったりすると、買い物をせずに離脱する人もいます。
直帰率を改善するには、他ページへの導線を分かりやすくすることです。
また、訪問者がアクセス前に期待していた情報と、ページの内容が一致しない場合も直帰率は高くなると考えられます。
コンテンツの内容や、SNSやメールマガジンでの宣伝文句などを見直し、訪れた人が欲する情報を提供できるサイトを目指しましょう。
ROASを改善したい
ECサイトで買い物をする人が多くても、人を呼ぶための広告にお金をかけすぎると最終的な利益は減ります。
セッション数やCVRが十分なのに経営状況がよくないときは、広告の効率が悪くないかを見直しましょう。
ROASを改善する際に行いたいことが、広告媒体の見直しです。
ECサイトのターゲットに合わない媒体で広告を掲載しても、効率は悪いといえるでしょう。
また、リマーケティング(過去にECサイトを訪問した顧客に広告を表示する)を行うことも効果があります。
ECサイトのKPIを設定して売上が伸びた成功例

ここからは、ECサイトがKPIを設定して売上が伸びた例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
アパレル
アパレル業界では一般的に扱うアイテム数が多く、顧客の年齢層も幅が広いことも珍しくありません。そのためKPI設定のためのデータ収集とデータに基づくKPIの設定作業の負担が大きく、KPIの重要性は理解されていても十分に活用されていないケースがあります。
KPI設定に必要な指標の取得を自動化することで、CV数やリピート数から適切なKPIを設定すると同時に、売れ筋アイテムの設定やクーポン配布のタイミング調整などKPI達成の施策も打てるようになり、売上向上が期待できます。
美容・コスメ
美容・コスメは実店舗数が多い一方でECサイトでは商品のお試しができないデメリットもあり、そもそもECサイトの運営が難しい業界です。したがって、信頼性を上げる、付加価値を付けるなどの施策とそれに伴うKPI設定が必要になります。
具体的には美容情報を提供するコラムを設置し回遊数を上げる、ユーザーレビューを設置しCVRを上げるなどの施策が考えられます。
定期的な観測と状況に合わせたPDCAを繰り返す

仮説・検証を繰り返すとKGIの達成に近づきます。定期的な観測と状況に合わせたPDCAを繰り返しましょう。
KPIの達成度をチェックすれば、その仮説が正しいか、現状とずれているかなどを分析できます。
また、定期的に状況を観測するためには指標が必要です。Googleアナリティクスやメール購読者数、開封率などの指標を活用しましょう。それぞれの数値の推移を計測すると、これまで実施した改善案を分析でき、今後の方向性が見えてきます。
KPI設定が難しい場合はツールの導入からでも

KPIの設定や分析、PDCAが難しいと感じる場合、ECサイト向けのツールの導入を検討しましょう。
例えば、ECサイトでカゴに入れたあと購入に至らなかった商品の購入を促すカゴ落ち対策は、購入率の向上が期待できます。そのほか、再度メールでお知らせするレコメンドメールの送信や、購入までのステップの削減などができるツールもおすすめです。問い合わせ・顧客対応をサポートするチャットボットの導入も効果的でしょう。
ツール例
・カゴ落ちツール
・Web接客ツール・チャットボットツール
・CRM・MAツール
KPI設定はECサイト運営に不可欠

今回は、KPIの基本項目やKPIツリーの設定方法を解説しました。
ECサイトの売上を向上させるには、KPIの設定が必要不可欠です。自社サイトの現状を把握し、KGIを達成できるようなKPIを設定しましょう。
また、ECサイトの改善方法として、カゴ落ち対策やチャットボットなどのツールの導入もおすすめです。