EC事業者のカスタマーサポートを効率化するための具体策とは
 EC市場の競争が激化している今、EC事業者が安定した売上を確保するためには、ただ商品を販売するだけでなく、顧客との継続的な関係性を構築することが求められます。
なかでも顧客からの問い合わせに対応するカスタマーサポート(CS)は、顧客体験価値(CX)を大きく左右する重要な部門の一つとなります。
しかし、オペレーターの人手不足やチャネルの多様化などによってカスタマーサポートの運営負担が大きくなり、「なかなか満足度の向上につなげられない」と課題を持つ事業者も少なくありません。
この記事では、リソースに課題を持つEC事業者さまに向けて、カスタマーサポート業務を効率化するための具体策について解説します。
目次
- EC事業者におけるカスタマーサポート部門の業務
 - 問い合わせへの対応
 - 顧客管理
 - 返品・交換依頼への対応
 - カスタマーサポートの効率化が求められる理由
 - 限られたリソースで迅速に対応するため
 - よりよい顧客体験を提供するため
 - チャネルが多様化しているため
 - カスタマーサポートの業務効率を図る指標
 - 平均対応時間(AHT)
 - 初回解決率(FCR)
 - 顧客努力指標(CES)
 - EC事業者のカスタマーサポートを効率化する具体策
 - ➀オペレーターのモニタリングと教育制度の強化
 - ②応対マニュアルの整備・共有
 - ③ECサイト上のFAQページの充実
 - ④チャットボットの導入
 - ⑤顧客管理システムの導入
 - ⑥ナレッジベースの構築
 - ⑦アウトソーシングの活用
 - カスタマーサポート業務にお悩みの方へ
 
EC事業者におけるカスタマーサポート部門の業務

ECサイトの運営において、カスタマーサポート部門が担当する業務は多岐にわたります。効率化に取り組む前に、まずは主要な業務内容とその特性を把握しておきましょう。
>>関連記事:ECサイトの成功のカギはCS!業務内容やポイントを解説
問い合わせへの対応
問い合わせ対応は、カスタマーサポートの中心的な業務です。電話・メール・Web上のフォームなどから寄せられた商品に関する質問や要望について、定められたマニュアルに沿って回答・対応します。
▼問い合わせ内容の具体例
- 販売している商品に関する詳細情報
 - サイトの操作手順
 - 利用可能な決済手段や配送状況に関する質問
 - 商品やサービスに対するクレーム
 
実店舗を持たない事業者では、ECサイトの問い合わせ窓口が顧客と接する限られた場となるため、応対品質がブランドのイメージや信頼性を大きく左右します。
顧客管理
顧客管理は、既存顧客の購入履歴や返品実績、過去のやり取りの内容などを記録・管理する業務です。蓄積されたデータは、問い合わせがあった際に参照したり、営業活動やマーケティング施策に活用したりします。
▼顧客データの活用例
- クロスセルで関連商品を提案する
 - アップセルでより高価格帯の商品を勧める
 - 契約・解約検討中の顧客にフォローコールを行う など
 
カスタマーサポートに蓄積された顧客データは、商品に関する要望や問題点を把握するためのヒントにもなるため、ECサイトの運営において重要な情報資産になります。
返品・交換依頼への対応
カスタマーサポートでは、「注文した商品がイメージと異なっていた」「サイズが合わなかった」などの理由で返品を希望する顧客への対応を行います。
また、「商品に初期不良が見つかった」「配送中に商品に傷がついた」といったクレームがあった際には、商品の交換手続きを行います。
返品・交換の対応に時間がかかると、顧客の信頼を失いリピート購入の機会を逃してしまう可能性があります。また、ネガティブな口コミが広がりブランドイメージの低下につながるおそれがあるため、丁寧かつ迅速な対応が求められます。
カスタマーサポートの効率化が求められる理由

カスタマーサポートは、顧客の購買プロセスに直接関わる部門となります。「対応が遅い」「応対品質が低い」といった場合には、顧客離れや売上減少を招くことも考えられます。
顧客満足度を高めて顧客ロイヤリティやリピーターの向上を図るためには、カスタマーサポート部門を効率的に運営できる体制を整えることが重要です。
ここでは、カスタマーサポートの効率化が求められる具体的な理由について解説します。
>>関連記事:カスタマーサポートの業務を効率化するには?|必要性や方法を徹底解説
限られたリソースで迅速に対応するため
EC市場規模の拡大に伴い、顧客からの問い合わせ件数は増加することが見込まれます。
現状のオペレーター体制のままでは、応答できない問い合わせが発生したり、顧客の待ち時間が長くなったりして稼働率の低下につながる可能性があります。また、ECサイト上に必要な情報が不足していると、自己解決できるはずの問い合わせまで増えてしまいます。
限られた人員で多くの問い合わせに迅速に対応するには、一人ひとりの処理効率を高めたり、対応の一部を自動化したりして、効率的に運営できる体制を構築することが必要です。
>>関連記事:ストレスのたまらない問い合わせ対応とは?ECサイトの運営がつらくなる前に
よりよい顧客体験を提供するため
数多くのECサイトがあるなかで、商品の価格だけで差別化を図ることが難しくなっています。「このECサイトを利用したい」「次もこのECサイトで買いたい」と思ってもらうには、よりよい顧客体験を提供できるかが重要となります。
カスタマーサポートの応対品質に不満を感じられた場合には、別のECサイトに流れてしまったり、SNSやレビューサイトに否定的な口コミを投稿されたりする可能性があり、新規顧客の獲得にも悪影響を及ぼしかねません。
リピーターを増やしてLTV(顧客生涯価値)の向上を目指すには、カスタマーサポートで提供する顧客体験を高めることが重要です。
NTMにおけるコンタクトセンターの応対品質の向上方法については、以下の資料をご参照ください。
>>サービス資料:当社コンタクトセンターの応対品質についてはこちら
チャネルが多様化しているため
EC事業者が顧客と接するチャネルが多様化していることも、カスタマーサポートの効率化が必要とされる理由の一つです。
▼チャネルの種類
- 電話
 - メール
 - ライブチャット
 - SNSの公式アカウント
 - アプリケーション など
 
チャネル数が多くなるほど、カスタマーサポートの対応窓口を増やすための人員が必要になり、現状のリソースでは対応しきれなくなる可能性があります。また、各窓口で発生する情報を共有できていないと、チャネル間での連携トラブルが起きることも考えられます。
顧客がどのチャネルで問い合わせをしてもスムーズに対応できるようにするには、各窓口での対応業務を効率化して情報を一元管理できる仕組みが必要です。
カスタマーサポートの業務効率を図る指標

カスタマーサポートの効率化に取り組む際は、客観的な指標を用いて現状や改善策の効果を測定することがポイントです。ここでは、業務効率を評価するために活用される代表的な3つの指標について解説します。
平均対応時間(AHT)
平均対応時間(Average Handle Time:AHT)とは、オペレーターが問い合わせを受けてから対応を完了するまでにかかった時間の平均値を指します。通話時間や後処理に要した時間を含めて算出されます。
▼AHTの算出方法
AHT=総対応時間(通話・保留・後処理)÷総通話件数
AHTを算出することで、オペレーターの対応スピードや処理効率などを把握できます。数値が小さくなるほど一人当たりの処理件数が多く、より多くの問い合わせに対応していることが分かります。
ただし、必ずしも数値が小さいほうがよいというわけではありません。重要な説明や確認を省略して時間を短縮すると、かえって顧客満足度の低下を招く可能性があります。
初回解決率(FCR)
初回解決率(First Call Resolution:FCR)は、顧客が最初に問い合わせをした際に問題が完全に解決した割合を示す指標です。
▼FCRの算出方法
FCR=初回で解決できた件数 ÷ 総問い合わせ件数 × 100
この数値が高いほど、複数回の折り返しやエスカレーションが必要なく、問い合わせに対して効率的に処理できていることが分かります。数値が低い場合には、オペレーターの知識や情報検索のデータベースが不足している可能性があります。
顧客努力指標(CES)
顧客努力指標(Customer Effort Score:CES)は、顧客が問い合わせから解決にいたるまでに要した労力を数値化した指標です。カスタマーサポートにおいては、問題解決のために顧客がどれだけの手間や時間を費やしたかを示します。
▼CESの算出方法
問い合わせ後のアンケートで段階的に評価してもらい、平均値を算出する
この数値が低いほど、ストレスの少ない顧客体験を提供できていると考えられます。数値が高くなっている問い合わせ内容については、顧客の労力を減らすために応対プロセスやチャネルの見直しが必要です。
EC事業者のカスタマーサポートを効率化する具体策

ここからは、カスタマーサポートを効率化する具体策を紹介します。自社での問い合わせ傾向やリソースの状況、オペレーターのスキルなどを踏まえて複数の方法を組み合わせることで、より大きな効果が期待できます。
➀オペレーターのモニタリングと教育制度の強化
オペレーターのスキルを向上させて応対品質の標準化を図るために、モニタリングによる評価・フィードバックと教育を実施する方法があります。
定期的に通話の内容やチャットの履歴を抽出して、応対品質の評価・フィードバックを行うことで、課題の発見と対応の標準化が可能になります。また、研修プログラムを充実させることにより、オペレーターの業務スキルの向上を促せます。
このようにオペレーターの処理スピードや応対品質の均一化を図ることで、平均対応時間(AHT)の短縮や初回解決率(FCR)の向上につながります。
NTMが手掛けるコールセンター研修制度については、以下の資料をご参照ください。
>>サービス資料:当社のコールセンター研修制度についてはこちら
②応対マニュアルの整備・共有
応対マニュアルの整備は、オペレーターごとの応対品質のばらつきをなくして、業務を標準化するための基本となります。新人のオペレーターでも、マニュアルに沿って判断・処理できるため、対応時間の短縮と品質の安定化につながります。
▼応対マニュアルに定めておく内容の具体例
- 商品の基本情報(価格・プラン・性能・契約形態など)
 - 購入・申し込み手続きの処理フロー
 - 頻度の高い質問への回答例
 - 配送ポリシー
 - 返品・交換の手順
 - キャンペーン情報 など
 
また、一度作成して終わりではなく、定期的に内容を見直すことも必要です。経験豊富なオペレーターの対応フローや話し方を参考にして、現場で実践できるスクリプトやフローチャートとして整備するとよいでしょう。
③ECサイト上のFAQページの充実
顧客自身で疑問を自己解決できる仕組みを整えることは、問い合わせ件数を減らすための有効な手段の一つです。
商品や購入手続きに関するよくある質問への回答をまとめたFAQページを作成して、ECサイトの分かりやすい位置に設置することで、定型的な問い合わせを削減できます。
▼FAQを作成する際のポイント
- 過去の問い合わせ履歴を分析して、よくある質問の回答を詳細に記載する
 - 専門用語は使わず、顧客目線で分かりやすい言葉で回答する
 - 質問の内容に関連するページのリンクを設置する
 
また、新商品の発売やキャンペーンが開始された際は、FAQの内容を同じタイミングでアップデートすることを欠かさないようにしましょう。
NTMが開発したオリジナルのFAQシステムであるCS_ANSWERについては、以下の資料をご参照ください。
④チャットボットの導入
チャットボットは、Web上の入力フォームに問い合わせ内容を記入することで、自動で回答内容や指示を表示するシステムです。
ECサイトにチャットボットを導入することで、定型的な問い合わせへの回答を自動化して、24時間365日対応が可能になります。これにより、オペレーターによる有人対応の件数を削減できるほか、顧客努力指標(CES)の低下による顧客満足度の向上につながります。
ただし、複雑な質問や個別の要望についてはチャットボットだけでの対応は難しくなります。問い合わせ内容に応じてオペレーターに移行できる設計にすることが重要です。
AIチャットボットについては、以下の資料をご参照ください。
⑤顧客管理システムの導入
顧客管理システム(Customer Relationship Management:CRM)は、顧客の基本情報や過去の購入履歴、問い合わせ履歴などを一元管理できるシステムです。
CRMを導入することで、オペレーターが問い合わせを受けた際に必要な情報を迅速に参照できるようになり、平均対応時間(AHT)の短縮を図れます。また、保留による待ち時間を減らせるため、顧客満足度の向上にもつながります。
⑥ナレッジベースの構築
ナレッジベースは、個々のオペレーターが持つ知識やノウハウを一元管理して、組織全体で共有できるようにしたデータベースです。
カスタマーサポート部門で情報共有の仕組みを整備することで、オペレーターが必要な情報を検索でき、経験やスキルの違いによる応対品質のばらつきを抑えることが可能です。
▼カスタマーサポート部門のナレッジベースに共有する情報
- 応対の成功事例・失敗事例
 - 温度感の高い顧客への接し方
 - クレームの解決手順 など
 
オペレーターのスキル底上げと品質の均一化を図ることにより、平均対応時間(AHT)の短縮や初回解決率(FCR)の向上につながります。
NTMにおけるナレッジの管理については、以下の資料をご参照ください。
>>サービス資料:NTMの応対品質の仕組み:育てる・守る・高める・支える
⑦アウトソーシングの活用
ECサイトのカスタマーサポートは、返品交換やクレーム対応などの業務が多岐にわたり、オペレーターや管理者の負担が大きくなります。社内のリソースだけで対応しきれない場合には、外部に業務を委託することも一つの方法です。
ECサイトのカスタマーサポートに特化した専門事業者に委託することで、豊富な知識と経験を活かした高品質で安定したサービスの提供が期待できます。
また、社内のリソースを商品企画やマーケティングといったECサイト運営のコア業務に振り分けることができるため、競争力の強化にもつながります。
カスタマーサポート業務にお悩みの方へ

ECサイトのカスタマーサポートを効率化することは、限られたリソースで幅広いチャネルの問い合わせに対応し、よりよい顧客体験を提供するために必要な取り組みです。
オペレーターのスキル向上や応対品質の標準化によって処理効率を高めたり、ITツールを導入して有人対応の自動化や情報共有の円滑化を図ったりすることがポイントです。また、即効性の高い手段としてアウトソーシングの活用も挙げられます。
日本トータルテレマーケティング(NTM)では、EC事業者様のカスタマーサポート業務を包括的に支援するアウトソーシングサービスを提供しております。長年培ってきたノウハウと充実した研修制度により、高品質な応対を実現いたします。
カスタマーサポートの効率化にお悩みの際は、ぜひNTMにご相談ください。

