コンタクトセンターのマネジメントとは?管理者の役割や必要なスキルを解説

コンタクトセンターで安定した稼働率や応対品質を維持するためには、現場のマネジメントが重要となります。オペレーターの育成から業務改善などの幅広い対応が必要になるため、マネジメント担当者に求められる役割・スキルも多岐にわたります。
「オペレーターが離職してしまう」「応対品質が安定しない」「稼働率が低い」などの課題を持つコンタクトセンターは、マネジメント力を強化する取り組みが求められます。
この記事では、コンタクトセンターにおけるマネジメントの重要性や担当者ごとの役割、管理する領域、求められるスキル・資格などについて解説します。
目次
コンタクトセンターにおけるマネジメントとは

コンタクトセンターにおけるマネジメントとは、電話・メール・チャットなど多様なチャネルの問い合わせ対応について、事業目標を達成するための運用管理を行うことです。
マネジメントの基本的なプロセスは、以下のとおりです。
ステップ | 内容 |
---|---|
1.現状把握 | センターの運営状況や課題、オペレーターのスキルレベルを分析する |
2.KPIやKGIの作成 | 目標達成のための具体的な指標を設定する |
3.体制の構築 | 運営体制とワークフローを整備する |
4.PDCAの実行 | 継続的な改善サイクルを回して業務効率や品質を向上させる |
コンタクトセンターでのマネジメントは、単なるオペレーターの管理にとどまらず、センター全体の生産性と品質を向上させるための不可欠な活動といえます。
コンタクトセンターマネジメントの重要性

コンタクトセンターで高い品質を維持しつつ、効率的かつ安定した運営を実現するために、マネジメントに取り組むことが重要です。
現代のコンタクトセンターは対応チャネルが多様化しており、オペレーターにはマルチチャネルに対応できるスキルと専門的な商材の知識が求められるようになりました。
一方で、運営コストの削減や品質向上に対する要求は強まっており、コンタクトセンターではさまざまな課題が生じています。
▼コンタクトセンターが直面する課題
- オペレーターが定着しない
- 業務効率や応対品質にばらつきがある
- 顧客満足度が上がらない
- チーム管理や人材育成ができるSVが不足している など
このような課題を解決するには、コンタクトセンターにおけるオペレーターや業務プロセス、応対品質、稼働状況などを適切に管理して組織体制を強化することが求められます。
コンタクトセンターマネジメントを担当する管理者

コンタクトセンターでは、複数の階層の管理者が連携してマネジメント業務を遂行することによって運営を支えています。それぞれの役職によって、求められる役割や業務の範囲が異なります。
ここでは、コンタクトセンターを支える主な管理職の役割を解説します。
センター長
センター長は、コンタクトセンター全体の運営を管理する最高責任者です。すべてのマネジメント活動を統括的に管理して、目標達成に向けた戦略立案と実行を指揮します。
▼センター長の役割
- 経営戦略に基づく事業戦略や収支計画の作成
- センター内にある各部門の統括
- プロフィットセンター(価値創造部門)への変革 など
具体的な業務には、センターの収支計画やリソース配分といった経営的な視点での管理に加えて、センター内にある各部門の統括などが含まれます。また、コンタクトセンターを企業の戦略部門として機能させるための重要な役割を担います。
マネージャー
マネージャーは、センター長の下で現場のオペレーション部門を統括する責任者です。事業戦略を具体的な施策に落とし込み、目標達成に向けて実行します。
▼マネージャーの役割
- 事業戦略を踏まえた計画策定・実行
- 現場で生じる課題解決の推進
- センター長と各部門をつなぐ窓口
- スーパーバイザー(SV)の育成 など
具体的な業務には、品質管理基準の見直しや研修プログラムの企画・実施、各チームのパフォーマンス分析、SVの育成計画の策定などが挙げられます。現場のオペレーターが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整備する役割があります。
スーパーバイザー(SV)
スーパーバイザー(SV)は、現場のオペレーターを取りまとめるチームリーダーです。コンタクトセンターマネジメントにおける主要な実行役を務めます。
▼スーパーバイザー(SV)の役割
- オペレーターの指導・管理
- 稼働率や品質に関する目標管理
- エスカレーション対応 など
顧客対応の最前線にいるオペレーターのスキル強化やメンタルケアなどを行い、目標の達成に向けて実践的なサポートを行います。また、現場の「声」をマネージャーやセンター長に伝える役割も担います。
コンタクトセンターが取り組む3種類のマネジメント

コンタクトセンターのマネジメントは、大きく3つの領域に分類されます。それぞれ異なる視点から組織を管理することで、安定した運営につながります。
➀人材マネジメント
人材マネジメントは、コンタクトセンターの重要な資産となるオペレーターの能力を最大限に引き出して、組織の持続的な成長につなげる取り組みです。人材の定着化と生産性の向上を目指すことが目的です。
▼人材マネジメントの主な業務
項目 | 内容 |
---|---|
オペレーターの採用・育成 | 業務特性に応じた人材採用計画やオンボーディング、スキルレベルに応じた研修プログラムの実施を行う |
モチベーション管理 | 公正な評価基準に基づくキャリアパスの提案や定期面談によるストレスレベルの把握により、定着率の向上を図る |
人員配置 | 個々のスキルや希望に応じて、最適な業務内容や部門への人員配置や異動を行う |
キャリア形成 | オペレーター能力や希望に応じて現場を統括するSVやマネージャーへのキャリア形成を後押しする |
②オペレーションマネジメント
オペレーションマネジメントは、センター内の業務プロセスを最適化して効率的な運営体制を維持する活動です。
現場のオペレーションをスムーズに進めるための「仕組みづくり」を中心として、業務効率化による応答率の向上や人件費の最適化、ナレッジ共有によるスキルレベルの均一化などを目指します。
▼オペレーションマネジメントの主な業務
項目 | 内容 |
---|---|
業務フローの構築 | 応対フローや処理手順を定めて、業務の標準化と処理効率の向上を図る |
ナレッジの構築 | 成功・失敗事例や対応テクニックを体系的に整理して、マニュアルや情報基盤を整備・共有する |
リソース管理 | 過去のデータから時期・時間帯ごとの入電数を予測して必要なオペレーター数を確保する |
ITシステムの導入・管理 | オペレーター業務を効率化するCRMやナレッジ管理システム、AIツールなどを導入して運用管理を行う |
③パフォーマンスマネジメント
パフォーマンスマネジメントは、設定した目標に対する達成度を評価して改善策に取り組む活動です。コンタクトセンターの稼働率や顧客満足度を向上させることが目的です。
▼パフォーマンスマネジメントの主な業務
項目 | 内容 |
---|---|
KPIの管理 | オペレーターの稼働効率や受電の応答率、平均処理時間、顧客満足度などの目標指標を測定して原因分析と改善を行う |
品質評価 | 応対記録のモニタリングや外部調査によってオペレーターの応対品質を客観的に評価する |
フィードバック | 品質評価の結果を踏まえて課題を明らかにし、オペレーター一人ひとりの課題に合った指導を行う |
コンタクトセンターのマネジメントに必要なスキル

コンタクトセンターのマネジメントには、多様なスキルが求められます。ここでは、特に重要とされる4つのスキルについて解説します。
コミュニケーション力
コミュニケーション力は、マネジメントに携わる人に求められる基本的なスキルです。
オペレーターに的確な指示や建設的なフィードバックを行ったり、役職や部門が異なる担当者とスムーズに連携したりするには、論理的なコミュニケーションが求められます。
例えば、SVにはオペレーター一人ひとりの話に耳を傾けて信頼関係を築くことや、モチベーションを高めて自己成長を促すコーチング能力が必要です。このように円滑な社内コミュニケーションは、社内の連携や結束力を強化する土台となります。
統率力
統率力とは、一貫した姿勢でチームメンバーをまとめて目標達成に向けて導く能力です。
SVやマネージャーは、オペレーター一人ひとりの強み・弱みを観察して、それぞれの特性や課題に合ったアプローチを実施したり、的確なアドバイスを提供したりして、チーム全体の士気や責任感を高めるスキルが求められます。
センター長は、コンタクトセンターの理念やビジョンを周知して、各部門の責任者に対して目指す方向性を示したり、行動を後押ししたりする牽引力が求められます。
課題発見力
課題発見力は、コンタクトセンター内で発生している潜在的な問題を見つけ出して、原因の調査・分析を通じて解決策を導き出す能力を指します。
特定のオペレーターの成績が伸び悩んでいる原因や、顧客からの問い合わせが集中している背景にある問題などを、データやヒアリングを通じて「見える化」します。
根本的な原因を特定して対処するスキルは、コンタクトセンターの生産性や顧客満足度を高めるうえで役立ちます。
状況判断力
顧客からの問い合わせが寄せられるコンタクトセンターでは、想定外のトラブルが発生することも少なくありません。安定した稼働を維持するには、状況に応じて最適な対処法を選択して迅速に実行する必要があります。
マニュアルに記載されていない特殊なケースや緊急性の高い問題が発生した際には、リスク評価を行い、対応の優先度やエスカレーションの必要性を判断することが求められます。マネジメント担当者には、冷静かつ迅速に最適な選択をする状況判断力が必要です。
コンタクトセンターのマネジメントに役立つ資格

コンタクトセンターのマネジメントに求められるスキルを体系的に学ぶために、資格を取得する方法があります。
『オペレーションマネジメント資格』は、一般社団法人日本コンタクトセンター教育検定協会が運用する資格です。業界標準の知識体系となるCMBOK3.0に準拠した試験に合格することで取得できます。CMBOK3.0とは、同協会が定めるコンタクトセンター業界の専門知識やスキルを体系的にまとめたガイドラインです。
コンタクトセンターのマネジメント人材を育成する一環として、実践的なマネジメント能力を身につけられる資格の取得をサポートすることも一つの選択といえます。
コンタクトセンターのマネジメント人材を育成するNTMの研修サービス

日本トータルテレマーケティング(NTM)では、オペレーター向けの基礎・応用研修に加え、管理者向け研修も幅広くご用意しています。
品質管理者研修や管理者理念研修、ミス事故防止に備えた研修などSVに求められる主要スキルを体系的に習得できる独自プログラムを提供しています。
「現場のマネジメントが機能していない」「社内のノウハウだけではSVの教育体制を整備できない」とお悩みの方は、外部研修サービスの活用を視野に入れてはいかがでしょうか。
まとめ

コンタクトセンターの運営において、生産性や顧客満足度を高めるためには現場のマネジメントが欠かせません。マネジメントに携わる役職にはセンター長・マネージャー・SVがありますが、なかでもSVは現場のチームを支える中心的な存在となります。
チームを牽引するリーダーシップ力をはじめ、コミュニケーション力や課題発見力などの高度なスキルが求められるため、マネジメント人材の育成に特化した教育が必要です。
日本トータルテレマーケティング(NTM)の管理者育成研修では、こうしたスキルを実践的に学び、安定した運営体制づくりを後押しします。