EC物流が直面する問題とは!?ネット通販の需要拡大に対応するための解決策
EC市場の規模は年々拡大しており、コロナ禍を経て消費者の購買行動はオンラインへとシフトしています。
ネット通販による購買活動が増えることは、EC事業者にとって大きなビジネスチャンスとなる一方で、物流を支える現場ではコストやリソースに関する課題に直面しています。
この記事では、ネット通販の現状やEC物流が直面する問題、EC事業の持続的な成長につなげるための解決策について解説します。
目次
EC市場が急速に拡大。ネット通販の現状とは

国内のEC市場は急速に拡大しており、特に個人消費者向けのBtoC-ECにおけるネット通販の取引は大幅に増加しています。
経済産業省が公表した『令和6年度 電子商取引に関する市場調査』によると、日本国内における2024年度のBtoC-EC市場規模は26.1兆円となっており、コロナ禍となる2020年の19.2兆円から右肩上がりで上昇しています。
なかでも「物販系分野」については前年度から3.70%増加しており、「サービス分野」「デジタル分野」と比較して伸び率が大きくなっています。
▼BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)

画像引用元:経済産業省『令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました』
このような調査結果を見ると、消費者による購買行動のオンライン化が広がり、ネット通販の利用が増えていることが分かります。
出典:経済産業省『令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました』
ネット通販の物流(EC物流)が抱える問題

ネット通販の物流(EC物流)では、実店舗の物流とは異なり「多品種」「小口配送」「リードタイムの短縮要求」といった特徴があります。
消費者によるネット通販の需要が高まることで、サービスの裏側を支える物流現場の運営体制に負担が生じるおそれがあります。
ネット通販の物流現場が抱える具体的な問題には、以下のような問題が挙げられます。
>>関連記事:ECビジネスにおける物流の重要性とは?特徴と課題について解説!
倉庫内作業やドライバーの人手不足
ネット通販の需要が高まることによって、物流現場で取り扱う商品数が増加して、倉庫内作業を担うスタッフやドライバーの人手が不足してしまう問題があります。
慢性的に人手が不足している現場では、注文に対して入出荷作業や配送が追いつかなくなる可能性があります。その結果、即日発送が難しくなったり、配送リードタイムが長くなったりして円滑なサービス提供が困難になります。
また、現場のスタッフやドライバーの業務負担が増加することにより、長時間労働や労働環境の悪化を招くリスクも懸念されます。
>>関連記事:物流業界の人手不足は深刻ってホント?現状と課題、解決策について解説
再配達による業務負担の増加
ネット通販の物流問題として「再配達」が挙げられます。再配達が必要になると、ドライバーの業務が圧迫されて通常配達に支障をきたしたり、人件費や輸送費などのコストの増加を招いたりします。
このような負担は運送会社だけでなく、「配送リードタイムの長期化」や「配達料金の上昇」といったようにEC事業者にも影響が及ぶ可能性があります。
国土交通省によると宅配便の取り扱い個数は増加傾向にあります。しかし、個数のうち約10.2%が再配達となっており、これは年間約6万人のドライバーの労働力に相当します。
▼実態調査に基づく再配達率の推移

画像引用元:国土交通省『宅配便の再配達削減に向けて』
また、再配達の理由については、消費者が「配達されることを知らなかった」「配達日時が指定できない商品だった」といった回答が多くを占めています。EC事業者には、運送会社と連携して再配達を減らすための仕組みづくりが求められます。
出典:国土交通省『宅配便の再配達削減に向けて』
物流コストの高騰
人件費や燃料費の上昇、ドライバーの不足などによって物流コストが高騰しており、EC事業の利益を圧迫する原因の一つとなっています。
物流コスト高騰の影響を受けやすい理由として、ネット通販ならではの購買傾向が関係しています。ネット通販が広がり注文数や注文頻度が多くなる一方、1回の注文における商品数は少ない傾向があります。
小口配送が増えるとトラック一台あたりの積載効率が悪くなり、輸送費が全体的にかさみやすくなります。EC事業者のなかには、こうした物流コストの増加に対応するために、送料無料の廃止や商品価格への転嫁などを実施しているケースも見られています。
>>関連記事:物流コストとは?内訳や上がる要因、コスト削減の要点・例を解説
物流業務の煩雑化
ネット通販では、消費者がオンライン上で商品を購入・決済できる手軽さからニーズが多様化・細分化しており、物流現場での業務の煩雑化を招いています。
▼煩雑化しやすい物流業務の例
- 多品種の在庫管理
- 同梱物のカスタマイズ(チラシ・ノベルティ)
- 出荷時のギフト包装やメッセージカード対応
- 配送日時指定に応じた出荷管理 など
これらの個別的な対応が増えることで、現場の業務負担が増えるほか、物流プロセスが複雑になり誤出荷や欠品などのトラブルが生じやすくなる可能性があります。
>>サービス資料:物流代行サービス「スゴロジ」の品質について
ネット通販の物流に影響をもたらす2024年問題

物流現場に対応が求められる課題として「2024年問題」があります。
2024年問題とは、働き方改革関連法の施行に基づき、自動車運転業務に従事するドライバーに対する時間外労働の上限規制が適用されることによって発生する諸問題を指します。
ドライバーが働ける時間が制限されることで、1日に運べる荷物量が減少して、輸送力が不足することが懸念されています。この問題は、荷主となるEC事業者にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
▼EC事業者への影響
- ドライバーの稼働時間制限により、当日・翌日出荷の対応が困難になる
- 長距離輸送や夜間帯の指定が難しくなり、配送日時指定の制限が必要になる
- 輸送力の低下による運送会社の売上減少を補うための値上げ要請が増加する
- 運送会社の配達業務が逼迫して、誤配送や破損などのリスクが高まる など
2025年現在、すでに法規制の影響が物流現場に現れているケースも見られます。EC事業で安定した物流を維持するためには、運送会社との連携を強化して効率的な輸送ができる物流体制を構築することが重要です。
出典:国土交通省『物流2024年問題について』
ネット通販の物流問題に対応するための解決策

ネット通販の物流問題に対応するには、限られたリソースで効率的に物流を維持できるようにプロセス全体の効率化に取り組むことが重要です。ここからは、具体的な解決策について紹介します。
➀物流業務を一元管理するシステムの導入
EC物流を支えるバックヤード業務を効率化するには、注文受付から商品の出荷までの一連の物流プロセスを一元管理できるシステムの導入が有効です。
受注部門・入出荷部門・在庫管理部門などと連携して、円滑に業務フローを進行できる体制を整備することで、業務の効率化と正確性の向上を図れます。
紙ベースで運用していた業務をデジタル化することにより、データの転記ミスや情報共有の漏れなどのヒューマンエラーが発生しにくくなり、在庫差異や誤出荷を防止できます。
▼物流業務に活用できるシステムの例
| 概要 | |
|---|---|
| 受発注管理システム (OMS) |
ECサイトからの注文データを集約して、受注処理や出荷指示を行えるシステム |
| 倉庫管理システム (WMS) |
倉庫内の在庫状況や入出荷情報をリアルタイムで管理して、在庫管理やロケーション管理などを行うシステム |
| バース予約システム | 運送会社がトラックの入出庫時間を予約・管理して、倉庫での待機時間を削減するシステム |
>>関連記事:物流業務効率化のメリットとは?課題解決に向けた方法や事例
②物流倉庫の自動化
倉庫内作業を自動化する設備を導入して、入出荷や梱包作業を省人化する方法があります。
スタッフが手作業で対応するよりも業務のスピードと精度を高められるため、生産性の向上やピッキングミス・検品ミスなどのヒューマンエラーの防止につながります。多品種の注文が行われるEC物流において、高い品質と作業効率を維持するために有効です。
▼物流倉庫の自動化に役立つシステム・ロボット
| 種類 | 概要 | 導入効果 |
|---|---|---|
| 自動搬送ロボット (AGV/AMR/GTP) |
商品や保管棚を指定の場所まで自動で運搬するロボット | 入荷時の格納やピッキング時の移動の削減 |
| 自動倉庫システム (AS/RS) |
在庫の入庫・保管・出庫を自動で行う大型保管設備 | 在庫の保管効率の向上、入出庫作業の自動化 |
| デジタルピッキングシステム (DPS) |
棚に設置されたランプとデジタル表示器でピッキングを指示するシステム | ピッキングの作業スピードの向上やミスの削減 |
| 自動ピッキングシステム | 機械やロボットアームなどで商品を棚から自動で取り出すシステム | ピッキング作業の自動化と正確性の向上 |
| デジタルアソートシステム (DAS) |
仕分け先に設置してデジタル表示器で、商品を投入する場所・数量を指示するシステム | 複数オーダーの仕分け効率化、仕分けミスの削減 |
③多様な受け取り方法の導入
物流コストや再配達の削減を図るには、多様な配送オプションを導入して、消費者が受け取り場所・方法を指定できるようにすることがポイントです。
ネット通販の物流では、EC事業者が委託する運送会社を介して注文者の元に商品が届けられる流れとなります。ドライバーによる効率的な輸送を行うためには、1回の配達で配送が完了できる仕組みが必要です。
▼EC事業者に推進が求められる多様な受け取り方法
- 宅配ボックス
- 駅やコンビニなどの施設での受け取り
- 配送アプリの利用(配送状況を運送会社と消費者がリアルタイムで共有)
また、配送オプションに応じた送料の設定は、配送料の適正化やサービス品質の維持にもつながります。
④共同配送の実施
EC事業者とラストワンマイル配送を担う運送会社が連携して、共同配送を実施することも有効です。共同配送とは、複数の荷主の荷物を集約して、同じトラックで配送先へ運ぶ仕組みを指します。
個々のEC事業者が配送を手配するのではなく、配送ネットワークを共同利用することにより、トラックの空きスペースや無駄な走行を減らし、輸送費の負担を抑えられます。この共同配送は、2024年問題への対策としても注目されています。
▼共同配送のメリット
- 配送ルートの最適化によるリードタイムの短縮
- トラックへの積載効率の向上による輸送力の維持
- トラック車両とドライバーの有効活用 など
⑤物流代行(アウトソーシング)の活用
ネット通販における物流業務の生産性向上や安定したサービス品質の維持を目指すには、物流代行(アウトソーシング)を活用することも一つの方法です。
物流代行を活用することで、自動化・デジタル化の設備を自社で導入するコスト・準備期間をかけることなく、EC物流現場が抱える問題の解決を図れます。
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EC物流代行には、おもに2つの形態があります。
▼EC物流代行の形態
| 概要 | 適しているケース | |
|---|---|---|
| 3PL(Third Party Logistics) | 物流戦略の企画立案やシステム構築を提案し、包括的に運用を受託するサービス | 物流コストや運営戦略を根本的に見直したい |
| フルフィルメント | 受発注、入出荷、在庫管理、カスタマーサポートまで、EC物流の全工程を一括で代行するサービス | コア業務に集中したい、物流品質を早期に安定させたい |
EC物流の規模や自社のリソース、現場の課題などを踏まえて、ニーズに合った代行サービスを選ぶことが大切です。
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『スゴロジ』でネット通販の物流を効率化

日本トータルテレマーケティング(NTM)のフルフィルメントサービス『スゴロジ』は、受注から配送にいたるまでの一連のプロセスをワンストップで対応しています。人と機械の力を融合させたラインにより、高効率かつ高品質な作業を実現しています。
▼スゴロジの品質
- 人と機械の協働により最適なラインを構築し、誤出荷の少ない高品質な物流を実現。
- 梱包管理やサイズ測定をデジタル化することで、顧客ごとの多様なニーズに柔軟に対応可能。
商品のピッキング以降は、システム・ロボットによる自動化ラインで運用しているため、多品種の取り扱いでも高い物流品質を維持することが可能です。ヒューマンエラーや属人化を防ぎ、高効率で安定した物流サービスを提供いたします。
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まとめ

ネット通販の需要拡大と2024年問題の影響により、EC物流現場では人手不足や物流コストの高騰、業務負担の増加などのさまざまな問題が生じています。
EC事業の持続的な成長を目指すには、サービス品質を維持しつつ物流プロセス全体で効率化を図ることが重要です。デジタル化・自動化された高品質かつ生産性の高いEC物流を実現するには、物流代行サービスを活用することも有効です。
『スゴロジ』は、EC物流のワンストップでサポートしており、現場が抱える人手不足や品質問題を解決します。当社の物流センターで実際の現場を見学してみませんか?ぜひこちらからお申し込みください。

