地方自治体のペーパーレス化が求められる理由は?課題やメリット、成功事例も

地方自治体では、紙媒体での業務が根強く残っていることも多く、職員における業務負担の増加が懸念されています。働き方改革やデジタル化が推進されるなか、地方自治体の業務においてもペーパーレス化を導入することが求められています。
今回は、地方自治体にペーパーレス化が必要とされる理由や導入のメリット、成功事例などについて紹介します。
目次
地方自治体のペーパーレス化が求められる理由

なぜ地方自治体でペーパーレス化が必要とされるのでしょうか。ここでは、地方自治体にペーパーレス化が求められる理由を3つご紹介します。
労働力不足への対応
地方自治体におけるペーパーレス化が必要とされる背景の一つに、労働力不足があります。
日本では、少子高齢化の進行によって労働力となる生産年齢人口(15~64歳)が減少し続けています。地域の行政を担う地方自治体においても例外ではなく、公務員の試験受験者数は長期的に見て減少が進んでおり、労働力不足の課題が顕在化しています。
また、若手職員の離職数も増加傾向にあり、一般行政職における30歳未満の離職数は9年間で2.7倍となっています。
地方自治体の労働力不足が進行するなかで、業務の効率化や生産性の向上が重要な課題となっています。ペーパーレス化は、こうした業務改善の一環として注目されています。
出典:総務省「令和4年版情報通信白書 生産年齢人口の減少」「地方自治の担い手不足:若者の公務員離れ」
多様な働き方への対応
地方自治体のペーパーレス化は、多様な働き方を実現するうえでも必要といえます。
日本政府は、地方自治体でのダイバーシティ(※)推進や働き方改革の実現に向けて、個々の事情やライフスタイルに合わせて働き方を選択できる組織の構築を目指しています。勤務時間や働く場所を柔軟に選択できることは、育児・介護との両立にも重要な取り組みです。
これらを可能にするには、紙媒体や対面でのやり取りが必要となる業務をペーパーレス化して、オンラインで完結できる環境を整備する必要があります。
※多様性を受け入れ、誰もが生きがいを感じながら能力を発揮できる組織または社会
地域住民の利便性向上
地域住民の利便性を向上させるためにも、ペーパーレス化が求められます。
地方自治体での行政手続きには、紙媒体の様式を用いた書類が多く存在しています。地域住民は窓口を訪れる必要がありますが、「仕事や育児で忙しく時間がない」人も少なくありません。また、入力・確認といったバックヤード業務には時間がかかることから、待ち時間も発生しやすくなります。
地域住民の利便性を向上させるには、行政手続きをペーパーレス化してPC・スマートフォンから申請・請求を行えるようにする仕組みが必要です。Web上で手続きが行えると、窓口に行かなくても24時間365日で行政手続きを行えるようになります。
地方自治体のペーパーレス化が進まない理由

地方自治体のペーパーレス化を進められていない地域もあります。以下では、多くの地方自治体がペーパーレス化に踏み出せない大きな理由を2つ解説します。
導入コストがかかる
1つ目の理由は、導入に費用がかかることです。
ペーパーレス化を導入するには、業務フローをデジタル化するためのシステムやツールが必要になります。例えば、情報共有システムや電子申請システムなどが挙げられます。
長期的な目で見れば、ペーパーレス化は地方自治体の生産性向上に寄与しますが、高額な初期費用を理由に導入を足踏みさせてしまうケースが多く見受けられます。
抵抗を感じる職員がいる
2つ目は、職員による抵抗です。
従来の紙媒体での業務に慣れている職員のなかには、システムやツールを用いる新たな業務フローを習得する必要があることから、抵抗を感じる人も少なくありません。また、システムトラブルによって業務に影響しないか不安に思う人もいるでしょう。
多くの地方自治体でアナログ業務が深く根付いているため、ペーパーレス化を導入するには職員の理解や協力を得るための啓発活動とサポートが欠かせません。
地方自治体がペーパーレス化に取り組むメリット

地方自治体がペーパーレス化を導入すると、業務効率が高まるほか、コストの削減やセキュリティの強化などのさまざまなメリットが得られます。
ここでは、ペーパーレス化によって得られるメリットを紹介します。
業務効率化
地方自治体がペーパーレス化を導入すると、業務効率の向上が期待できます。
従来は、紙文書の確認やPCへのデータ入力、各種書類の管理などが必要になり、多くの労力と時間を要していました。
文書のデータ化により、閲覧・編集・検索・共有などの作業が簡単に行えるようになります。
また、システムやツールを活用して業務フローをデジタル化すると、自宅や外出先でも業務を行えるようになり、テレワークの推進に役立ちます。
コスト削減
ペーパーレス化を導入すると、紙媒体の書類を用いた業務や保存管理にかかっていたコストを削減できます。
▼ペーパーレス化で削減できるコスト
- 紙の購入費用
- 印刷にかかる費用
- 印刷機器の維持費用
- 郵送費用
- 保存管理費用
- 廃棄費用 など
これらはすべて「紙」を扱うために発生する費用です。ペーパーレス化を導入すれば「データ」として管理できるため、文書作成や保管などにかかる費用を大幅に削減できます。
セキュリティ強化
地方自治体がペーパーレス化するメリットには、セキュリティの強化も挙げられます。
紙媒体の文書・書類は、物理的に紛失したり、外部に持ち出されたりする可能性があります。万が一機密情報が外部に漏れた場合は、地方自治体の社会的信用を失いかねません。
ペーパーレス化すれば、システムやツールで重要なデータを管理できます。職員の業務や役職に応じてアクセス制限を設定したり、ログイン時のパスワードを管理したりすることにより、紙媒体よりも強固なセキュリティ対策を実施できます。
地方自治体でのペーパーレスの進め方

地方自治体でペーパーレス化を導入する際は、一つひとつのプロセスを着実に進めていく必要があります。現在の業務内容や課題を踏まえて、計画的にペーパーレス化を進めましょう。
①紙を使用している業務の洗い出し
まずは紙媒体で行っている業務内容を洗い出します。地方自治体の業務に用いられる文書や書類には、以下が挙げられます。
▼地方自治体の業務に使用される文書・書類
- 報告書
- 稟議書
- 申請書
- 契約書
- 請求書
- 会議資料
- マニュアル
- タイムカード など
業務を区分し、フローを整理することで視覚的に現状を把握しやすくなります。複数の部門・担当者をまたぐ承認プロセスが発生する場合には、その経路も明確にしておくことがポイントです。
②ペーパーレス化する業務を決める
紙媒体の業務について全体像を把握したら、ペーパーレス化する範囲を決定します。
ペーパーレス化する範囲を決める際は「大きな効果が期待できる業務」から順に取り組むことが重要です。確認しておくポイントは、以下のとおりです。
▼対象業務を決めるときに確認するポイント
- 文書や書類の作成・管理に負担がかかっているか
- 業務的・法的に電子化できる文書か
また、現場で働く職員の意見を聴くことも大切です。アナログな業務で生じている課題やペーパーレス化の要望を把握しておくことで、本格的に導入する際に理解や同意を得やすくなります。
③システムやツールを選ぶ
ペーパーレス化する業務が決まったら、それぞれの目的に適したシステムやツールを選定します。費用・使いやすさ・搭載機能・システム連携の可否などを確認します。
▼地方自治体の業務に役立つツールやシステムの例
種類 | 目的 |
---|---|
ワークフローツール | 稟議書や申請書の作成・承認 |
ファイル共有システム | 報告書の作成・共有 |
電子申請システム | 行政手続きのデジタル化 |
クラウド勤怠管理システム | タイムカードの打刻や集計 |
ペーパーレス会議システム | 会議資料の共有 |
チャットツール | 地方自治体組織内の情報伝達 |
④システムやツールを導入する
業務フローや文書管理などに役立つシステムやツールを選定したら、現場での導入に移行します。このとき、紙媒体で管理していた情報をすべてデータ化する必要があります。
すべての情報を人力でデータ化する作業は、多くの人的リソースを要します。通常の業務に加えて作業する必要があるため、繁忙期はできる限り避けるようにしましょう。
また、従来の業務フローが変わることで、現場に混乱が生じる恐れがあります。円滑にペーパーレス化へ移行するには、システムやツールの操作方法、新たな業務フローを定めて、職員への研修とサポートを実施することが重要です。
⑤効果測定を実施する
ペーパーレス化の導入後は、定期的に効果測定を実施しましょう。
地方自治体のペーパーレス化は「導入して終わり」ではありません。導入後の効果を測定して対象範囲を拡大したり、課題の改善につなげたりすることが必要です。
また、導入後の変化を視覚的にわかるように、業務の所要時間やコストなどを目に見える形にすることもポイントです。職員に必要性を理解してもらうことで、ペーパーレス化による抵抗を防げます。
地方自治体のペーパーレス化の成功事例

ここからは、ペーパーレス化に成功した地方自治体の事例を紹介します。
長野県長野市
長野県長野市では、会議で使用される資料の紙使用量削減を目的に、段階的に「ペーパーレス会議システム(SideBooks)」を導入しました。
タブレットを活用し、会議資料を電子化することでペーパーレス化に成功しました。
出典:長野市「ペーパーレス推進のためのタブレットの活用について」
青森県弘前市
青森県弘前市では、ペーパーレス化を推進するため、「ペーパーレス会議システム」を導入しています。
紙を前提とした業務からの脱却を図り、紙資源の削減を目的として、会議資料のデジタル化を進めています。
茨城県
茨城県では、業務のペーパーレス化を積極的に推進しています。対応可能な電子申請業務のうち、すでに53%が電子化されています。
また、公印の電子化にも着手しており、法令改正を国に働きかけながら、県庁業務のデジタル化に向けた取り組みを進めています。
地方自治体のペーパーレス対応は当社にご相談ください

地方自治体のペーパーレス化は、生産性の向上や多様な働き方の実現、地域住民の利便性向上を図るために必要な取り組みです。アナログな業務の改革を図ることにより、職員の業務負担軽減やコストの削減などのさまざまなメリットが期待できます。
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